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【第14回】SaaSを「使う」か、PaaSで「作る」のかの選択を

2014年12月15日(月)大和 敏彦(ITi代表取締役)

クラウド化がますます加速している。前回は、米国ではパブリッククラウドが、より広いエンタープライズ市場を目指してサービスを拡充していることや、利用企業のプライベートクラウド構築を支援するSI(System Integrator)事業者の動きを取り上げた。今回は、こうした動きの中で、利用企業は必要なアプリケーションをどう準備することになるのかを考えてみたい。

図1:アプリケーションにおける「使う」と「作る」の選択肢図1:アプリケーションにおける「使う」と「作る」の選択肢
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 クラウドコンピューティングがITに対し「作る」から「使う」へのシフトをうながすことは、本連載で何度も指摘してきた。クラウド上で利用するアプリケーションに対しても、同様に「作る」と「使う」の選択肢がある。すなわちアプリケーションを自ら開発するのか、クラウドサービスであるSaaS(Software as a Service)を使うのかである(図1)。

 まずSaaSの国内動向の参考として、2014年10月3日にASP・SaaS・クラウドコンソーシアム(ASPIC)が実施した「第8回 ASP・SaaS・クラウドアワード2014」における「ASP・SaaS部門」へのアワード応募企業の経営状況を見てみよう。

 アワード応募者のサービスの売り上げは、5億円以上が10%、5000万~5億円が36%、5000万円以下が45%だった。SaaS事業者の1社当たり売上高は年々増加している。分野別では、社会・業界特化系が毎年伸びている。広範囲で使われるアプリケーションのSaaS化と、業界ノウハウをベースに開発したSaaSが広がりつつあることが分かる。

 IaaS(Infrastructure as a Service)環境のコモディティ化に伴って、SaaS市場への参入が容易になっている。並行して、様々なサービスを備えた開発環境が進化している。これらにより、大企業が自社ノウハウやユースウェアを使ってSaaSを始めたり、アイデアを持つベンチャー企業がSaaS用にアプリケーションを開発してサービスを開始したりする流れが出てきている。

 今後、質の高いSaaSの品揃えが増えれば増えるほど、「使う」ための選択肢はより広がっていく。『平成25年度情報白書』によると、日本におけるクラウドサービスの利用実績は42.4%である。米国のそれが70.6%であることを考えれば、両社の間にはまだ大きな開きがあり、今後一層伸びる余地があるわけだ。

海外では基幹系アプリもSaaSへの移行が加速

 一方、グローバルなSaaSプレーヤーの動向はどうか。米Oracleの発表によれば、同社は世界第2位のSaaSベンダーとして594のプロダクトを提供している。提供領域は大きく「CX(Customer Experience)」「HCM(Human Capital Management)」「ERP(Enterprise Resource Planning)」の3領域に分けられる。

 この1年間でOracleはSaaSの顧客として新たに、CX領域で1101社、HCM領域で959社、ERP領域では263社を獲得したとする。企業の基盤となる領域のアプリケーションであっても、オンプレミスからクラウドへの移行が加速していることの現れであり、その選択肢としてSaaSが選ばれていることが分かる。

 SaaS分野でトップの米Salesforce.com(SFDC)は、自身やパートナー、あるいは顧客企業が開発したアプリケーションを流通させるために、「AppExchange」と呼ぶマーケットプレイスを展開する。既に2000以上のアプリケーションが登録されている。アプリケーションだけでなく、コンサルティングのパートナー情報や、カスタム化を図るためのSI事業者や開発者を探しだすこともできる。

 Salesforce.comがカバーするアプリケーション領域も、ビジネスアプリケーションから、コラボレーション、マーケティング、モバイル、カスタマーサクセスへと広がっており、より多くの企業のより幅広い業務に対応できるようになってきた。

 AppExchangeのようなマーケットトプレイスは、米Appleの「App Store」や米Googleの「Google Play」同様に、アプリケーション開発者にとってもメリットがある。競争力が高いアプリケーションを開発して登録すれば、ビジネスをグローバルに展開できる可能性が開ける。これは同時に、使う側にとっても。グローバルに優れたアプリケーションが使えるというメリットにつながっていく。

 Oracle、SFDCの例が示すように、アプリケーションは、ERPや人財管理のような基幹系から、企業内SNS(Social Networking Service)、セールス、マーケティング、各種サービスへと広がっており、様々なSaaSが使用可能になっている。

 利用企業にすれば、「自社のユニークさを認識し差異化要因として戦略的に残すところ以外はSaaSを選ぶ」という選択肢が現実のものになっている。自社に合うSaaSを選べれば、最新機能を迅速にコストも安く使えることになる。

人工知能の機能もSaaSとしての利用が可能に

 SaaSのもう1つのメリットは、「作る」ことができない、またはそれが難しい機能を使えることだ。その1例が、人工知能のアプリケーションである。米IBMや米Microsoft、米Googleなどが、人工知能分野への投資を加速させており、既に一部をサービスとして展開を始めている。

 例えばIBMは、同社の人工知能テクノロジー「Watson」を世界的に展開し、既に25を越える国々で顧客と利用契約を結んでいるとする。2014年10月には米Twitterとの提携を発表し、Twitterが持つデータがWatsonの利用可能なデータに加わっている。

 事例として、顧客とファイナンシャル・アドバイザーの間のやり取りのデータからアドバイザリー業務の効率化を目指す事例、がん患者のプロファイルや、医学的根拠や論文をベースにがん治療に関して効果的な治療計画を立てる事例、顧客サービスの為語学の習得させる事例等、幅広い応用が紹介されており、適用分野としての可能性の広がりと実用化へのステップを示している。

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