[真のグローバルリーダーになるために]

プロローグ─グローバルリーダーになるためには:連載小説『真のグローバルリーダーになるために』第1回

2015年1月9日(金)海野 惠一(スウィングバイ 代表取締役社長)

日本企業の海外事業展開を成功に導くには、真のグローバルリーダーが不可欠だ。今回から、今求められているグローバルリーダー像についての、連載小説形式で具体的かつ実践的に紹介する。主人公は、香港、ベトナム、インドネシア、中国を舞台に奮闘するIT企業の営業担当者だ。競争相手は中国企業と欧米企業、そして現地企業だが、熾烈なアジアマーケットでは、現在の日本企業の体制では勝てない。主人公が、いかにしてグローバルリーダーへと成長し、戦っていくのか。

 第1回は、グローバルリーダーを目指す本小説の主人公と、彼の上司や関係者など、主な登場人物を紹介しよう。以下の5人が、この小説の中心人物で、主人公は3年をかけてグローバルリーダーに成長していく。

主人公:佐々木 慎吾 日本ITCソリューション課長

 2000年に東工大工学部を卒業し、同年に大手IT企業の日本ITCソリューションに入社。研究・開発・営業・販促を経験し、2007年より海外企業との協業や海外市場開拓に従事してきた。中国・上海に3年間駐在し、現在は東南アジア市場のビジネス開拓に課長として従事している。2012年に慶応大学大学院社会科学研究科を修了し、現在はその博士課程前期に在籍中である。また1年前から自主的にグローバルリーダーを育成する「山下塾」に通っている。

主人公の上司:三森 日本ITCソリューション情報通信事業部長

 佐々木 信吾の直属の上司にあたる。情報通信事業部の東南アジア全般を担当し、積極的にアジア事業を推進するためには人材育成が急務だということを理解していて、部下の佐々木がグローバルリーダーになるよう徹底的した育成を心がけている。日本企業の幹部特有の「ともかくがんばれ」的な性格ではなく、これからは英語ができるだけではなく、世界でネゴシエート(交渉)ができる人材が必要だと実感している。

日本ITCソリューション社長:高橋社長

 高橋社長の家族はもともと海外との結びつきが強く、兄は外務省の高官である。高橋社長自身も東京大学を経て、アメリカのスタンフォード大学でMBAを修了している。日本企業が世界からますます取り残されていくことに隔靴掻痒の感を持って過ごしている。自社でもグローバリゼーション推進の旗振りをしてきたが、会社がその方向になかなか動かず、一向に変化しないので、イライラしている。

Nippon ITC Solution (Hong Kong) Limited副社長:森山

 この企業は日本ITCソリューションの香港の子会社であり、その副社長森山は主人公佐々木とは日本にいた時から懇意にしていた同僚である。香港での入札では佐々木とともに大いに活躍する。

山下塾・塾頭:木元

 木元はアメリカのコンサルティング企業に30年以上勤務した後、「山下塾」を主宰し、グローバルリーダーの育成に励んでいる。海外でもトップマネージメント相手にビジネスを展開できる数少ない日本人である。家族が長年、中国人だったこともあり、外国人には散々苦労してきた。現在も顧客企業の社長代行として、海外の事業展開を支援している。彼が山下塾を開校したのは、アジアにグローバルリーダーの育成機関がないためである。短期的な研修では、本当のリーダーは育成できないため、山下塾では「修行には最低3年かかる」と公言している。宣伝は一切せず、塾のプログラムはアジア一番だと本人は確信している。

 このほかにも、多くの人物が登場してくるが、物語の展開の中で追って紹介していく。

 それでは、佐々木慎吾が2014年に入札のために香港に出張した時の情景から始めよう。彼の上司である三森事業部長が香港への出張を命じた。目的は、現地での地下鉄の総合システムの全面改訂の受注可否を調査するためだ。競合相手は強豪の中国・北京鳳凰信息科技有限公司である。三森自身は内心、「今回は勝てない」と思っている。

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