日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2015年4月15日、国内ユーザー企業のIT投資・戦略の動向を定点観測する年次調査「企業IT動向調査2015」の結果概要を発表した。1125社の回答から浮かび上がったのは、IT予算は上向くも、既存のシステムの運用保守に追われて戦略投資に舵を切れないでいる、IT部門のリアルな今の姿だ。
JUASの企業IT動向調査は、同団体が1994年度以来、21年間継続して実施してきた年次調査である。国内ユーザー企業のIT投資動向やIT戦略・施策動向に関しての、経年変化をとらえた分析が特徴だ。
2015年度の調査は、2014年11月から2015年1月にかけて実施された。国内ユーザー企業4000社のIT部門を対象としたアンケート調査の後、うち50社のCIO/情報システム部長クラスへのインタビュー調査を行っている。回答企業の規模は、大企業(1000人以上)、中堅企業(300~1000人未満)、中小企業(300人未満)がそれぞれ全体の3分の1と、ほぼ同じ割合となり、1125社の有効回答(回答率28%)を得ている。
同調査では、毎年「重点テーマ」が設定されており、2015年度は「転換期に求められるIT部門の役割とは」をユーザー企業に問うている。JUASは今回、2014年度の調査で明らかとなった3つの課題(「業務部門との関係・要件定義の主体性」「業務改革人材の育成」「IT部門の年齢構成高齢化」)の解を引き続き求めながら、転換期にある今、どのようなIT推進組織体制を敷いて人材育成を行うべきかを調査結果から探っている。以下、JUASが公開した調査概要資料から、主要な項目をピックアップして紹介する。
漸増続くIT予算、2015年はリーマンショック前を上回る見通し
最初に、各社が回答した、IT予算の次年度予測の推移を見てみる(図1)。2015年度予測のDI値(Diffusion Index:上昇・拡張に関する指標の割合を示す動向指数)は23.8で、リーマンショック前の2007年度予測(21.0)を2.8%上回り、過去10年で最大の伸びとなった。経年推移を見ると、グラフが示すように、2010年度予測の-4.0を底に漸増傾向が続いている。
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調査では、IT予算の額自体の推移だけでなく、経営者がどこまでIT投資に重きを置いているかを測るべく、売上高におけるIT予算の割合を尋ねている。図2が示すように、2013年度・2014年度ともに単純平均で0.99%と横ばい傾向だ。JUASは、「例年、このIT予算比率についてはIT装置産業とも呼ばれる金融が突出しているが、IT予算の削減適正化が徐々に進んでいる」と分析している。
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