日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2015年4月15日、国内ユーザー企業のIT投資・戦略の動向を定点観測する年次調査「企業IT動向調査2015」の結果概要を発表した。1125社の回答から浮かび上がったのは、IT予算は上向くも、既存のシステムの運用保守に追われて戦略投資に舵を切れないでいる、IT部門のリアルな今の姿だ。
業務プロセスの効率化とリアルタイム経営が、経営貢献策の2トップ
では、企業は、IT投資で具体的にどのような課題解決にあたろうとしているのか。「IT投資で解決したい中期的な経営課題」の上位3つを尋ねた設問では、最多回答の「業務プロセスの効率化(省力化、業務コスト削減)」、2位の「迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)」が突出した。この2トップは例年と同じで、以降、「営業力の強化」「IT開発・運用のコスト削減」「業務プロセスの質・精度の向上(ミス、欠品削減等)」「営業力の強化」が2番手グループを形成している。

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IT投資の攻めと守りのバランスは依然「2:8」
図3で2番手グループの先頭につけたIT開発・運用のコスト削減は、IT投資の基本方針にも関わる課題である。調査では、ビジネスの新しい施策展開のための戦略投資(バリュー・アップ/攻めの投資)と現行ビジネスの維持・運営のための投資(ラン・ザ・ビジネス/守りの投資)の比率を尋ねている。この調査で定番となっている設問だ。
結果は図4のとおりだ。戦略投資と維持運営投資の全体平均比率はそれぞれ20.8%:79.2%で、前回とほぼ同じ2:8の比率となった。ちなみに、市場調査会社ITRが毎年実施している「国内IT投資動向調査2015」(2014年12月発表)でも同様の調査を行っており、2014年度の比率は戦略3:運用7であった(2015年、IT投資のあり方とIT部門の役割を改めて考える―ITR「国内IT投資動向調査2015」)。ITRの調査対象は従業員数1000人以上の大企業が4割以上であるため、「国内企業におけるIT投資の攻めと守りのバランスは依然2:8、IT予算が比較的潤沢な大企業でも3:7」という実態が見てとれる。

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