[調査・レポート]

“戦略2:運用8”、戦略投資に舵を切れないユーザー企業―JUAS「企業IT動向調査2015」

2015年4月28日(火)河原 潤(IT Leaders編集部)

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2015年4月15日、国内ユーザー企業のIT投資・戦略の動向を定点観測する年次調査「企業IT動向調査2015」の結果概要を発表した。1125社の回答から浮かび上がったのは、IT予算は上向くも、既存のシステムの運用保守に追われて戦略投資に舵を切れないでいる、IT部門のリアルな今の姿だ。

やや弱いビジネスモデル変革への意識

 「2:8比率」がIT投資バランスの現状だとして、そもそも、ITを活用したビジネスイノベーションの実現が、IT部門のミッションとして位置づけられているのか――。調査ではそれを問うている。

 設問では、現場の業務改善や組織の改革を支える基盤の確立を含む「業務プロセスの変革」と、商品・サービスの創造や顧客確保・拡大を含む「ビジネスモデルの変革」が、それぞれIT部門のミッションとして明示されているか否かを聞いている。JUASは、前者の施策例として、全社最適型の業務プロセスの効率化(BPR)やグローバルでの業務プロセス統合といった施策を挙げ、後者の施策例として、新商品およびサービスの企画・導入、ソーシャルマーケティングの展開を挙げている。

 その結果が図5だ。上のグラフにあるように、業務プロセスの変革は67.5%、約7割弱の企業で明示されている。一方で、ビジネスモデルの変革がIT部門のミッションとされている企業は約半数であった。また、5年前の結果と比べて、両方ともミッションとして明示している企業が増えていることがわかった。

図5:ITを活用したビジネスイノベーションの表明・実施状況(出典:JUAS「企業IT動向調査2015」)
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 また、下のグラフは、それぞれについて明示されていると回答した企業に対し、IT部門がそれらに実際に応えられているかを尋ねた結果だ。「応えられている」「一部応えられている」を合わせると、業務プロセスの変革では72.2%、ビジネスモデルの変革では58.9%という結果で、ビジネスイノベーションに向けた実施率は概ね6~7割といった状況だ。

IT基盤における取り組みの優先度

 事業部門主導でのクラウドやモバイルの活用が進む中、IT基盤への取り組みは、依然として、IT部門がイニシアチブを握って推進しなくてはならない領域と言える。図6にあるように、「IT基盤の統合・整備」の優先度を最高ないしは高と設定した企業が最多となった。これに、「データセンターの移転・統合」、「メインフレーム・システムの刷新」、「グローバルで共通のIT基盤構築」が続く。

図6:IT基盤における取り組み・優先度(出典:JUAS「企業IT動向調査2015」)
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 2014年は、パブリッククラウドにおいて、基盤系であるIaaSやPaaSの選択肢が大きく拡充された年でもあった。調査では「既存システムのIaaS、PaaSへの移設」の意向を尋ねている。その結果が図7の左のグラフで、企業サイト(18.3%)のほか、経理・財務会計(13.9%)、販売管理(9.2%)など一部の管理業務系や基幹系システムへの適用が進んでいることがうかがえる。ただし、全般的に、基幹系システムでのパブリック活用割合はまだまだ低く、主流は、依然としてWeb/フロント系を中心とした活用となっている。

 この設問については、今後の活用領域としてはどうかも尋ねている。右のグラフの結果を見るに、現在の傾向とそれほど変わりはないようだ。ただし、経理・財務会計で12.4%、人事・給与で10.3%と、管理業務系では、IaaS、PaaSの活用拡大が予想される。

図7:ITインフラ系パブリッククラウド(IaaS、PaaS)の活用領域(出典:JUAS「企業IT動向調査2015」)
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