日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2015年4月15日、国内ユーザー企業のIT投資・戦略の動向を定点観測する年次調査「企業IT動向調査2015」の結果概要を発表した。1125社の回答から浮かび上がったのは、IT予算は上向くも、既存のシステムの運用保守に追われて戦略投資に舵を切れないでいる、IT部門のリアルな今の姿だ。
業務改革/IT戦略の推進を担う人材に強いニーズ
人材の活用・育成は、IT部門にとって最重要ながら着手・実行が難しいテーマだ。まず、自社のIT部門でどのような人材が求められているのかについて、人材タイプごとの要員数増減を指数化することで探っている。
図8にあるように、業務改革推進担当は、現状の11.5%に対して今後24.8%(DI値22.2)、IT戦略担当は現状9.3%に対して今後28.0%(DI値20.8)と伸びが大きい。一方で、運用管理担当はDI値-3.6、運用担当がDI値-8.0と減員の意向が示されている。
この結果から、業務改革推進、IT戦略、システム企画を担当する人材を増やしたい一方、開発、運用を担当する要員は抑制・減少させたいという、IT部門のスキルセットをより上流の領域へシフトさせようとする意向がうかがえる。

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APT(標的型攻撃)をはじめとする昨今のサイバー攻撃の脅威に、企業は人材面でどのような策を講じているのか。調査では、情報セキュリティ人材に関する過不足状況を尋ねている。結果は図9のとおりで、全体的におよそ8割の企業でセキュリティ人材は不足を認め、充足していると回答した企業は1割程度にとどまった。

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さらに、経営幹部がセキュリティ対策にどの程度関与しているかを探ったのが図10だ。上のグラフは自社のセキュリティ対策に関する経営幹部の関与の度合いを尋ねた結果で、8割方の企業が不足しているという認識に立つ。また、下のグラフは現状を受けて、今後セキュリティ人材を育成するか、外部のセキュリティ専門家に委託するかを尋ねた結果である。ここでは、幹部のセキュリティへの関与が少ない企業ほど、自社育成も外部委託の意欲も少なく、その計画すら立っていないという現状が浮き彫りになった。

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