情報システム部門には本来、テーマを持って新たなことにチャレンジし続けるという、やりがいのある仕事が溢れているべきだ。しかし、いつの間にか自らの殻に閉じこもり、管理主体の部門になってしまった。R&Dを実践できず、遊び心を忘れてしまった要因は、実は自部門の中にあるのではないだろうか。
筆者の情報システムとの関わりは1990年に遡る。建設会社の事業部門に在籍していた折、部門長の命でApple社のMacintoshネットワークの展開を始めた時からだ。技術者としてプログラミングの経験くらいはあったが、情報用語も情報技術もろくに知らない身で、我ながら無謀とも思えるチャレンジだった。
当時のシステム部門は基幹となる社内ネットワークをしっかり組んでくれていて、事業部門の各フロアまでHUB(ネットワークの接続機器)が設置され、HUBから先は部門で自由に展開できる仕組みになっていた。パソコン通信やMS-DOSで簡易な計算ツールなどを作っていた多少コンピュータの知識のある仲間数人と始めたものの、実態は手探り状態の毎日だった。
本業は土木部門の技術業務。それをこなしながら、まだ日本製のパソコンではネットワーク構成が出来なかった時代に手作りのLANを構築し、様々なアプリケーションを試し、1991年春には部門200人の端末を繋ぐ一人一台のネットワークを完成させた。すべてがやってみなければ判らないことばかりだったが、予算を考えながら試行を繰り返し、失敗や感動を重ねてワクワクする日々を楽しんでいた。
情報通信技術の魅力は、R&Dによって魔法のような力を引き出せるところにあると思う。不可能を可能にすると言ってもいい。情報システム部門も、かつてはテーマを持ちながらR&Dをやっていた。コストセンターとして情報システムに厳しい目が向けられた頃から萎縮してしまい、R&Dも遊び心も忘れていった。いつのまにか、つまらない管理主体の部門になってしまった。
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