複数のチャネルにおける顧客経験をビジネスに転嫁させるオムニチャネルが、企業マーケティングで重要な位置を占め始めている。その複数チャネルのひとつとして現在も重要な位置を占めているのが、コンタクトセンターだ。プロフィットセンターとしての期待も大きいコンタクトセンターは、かつてのPBXベースの高額なものから、クラウドベースの低価格なものへと主流が移りつつある。グローバルでコンタクトセンターソリューションを展開するInteractive Intelligence(インタラクティブインテリジェンス=InIn)は、社内コミュニケーション用のクラウドサービスをセットにしたクラウドベースのコンタクトセンターソリューションを打ち出している。同社にとっての「クラウド2.0型」コンタクトセンターだという。
かつて、電話を唯一のチャネルとして顧客の対応窓口となっていた「コールセンター」は、FAXや電子メール、Webなど複数のチャネルに対応することで「コンタクトセンター」となった。コストセンターだったコールセンターは、「マルチチャネル」対応のコンタクトセンターとなることで、企業に利益をもたらすプロフィットセンターとしての期待を担うこととなった。
オムニチャネルの一端を担うものとしても、依然重要な位置を占めているコンタクトセンターだけに、通信事業者系のITベンダーを始め多くの企業からコンタクトセンターソリューションが提供されている。
かつてコールセンター/コンタクトセンターソリューションといえば、PBXベースのオンプレミス型が主流だったが、AWS(Amazon Web Services)などクラウドインフラの高信頼化、高機能化により、現在はクラウドサービスが主流となりつつある。そのAWSからクラウド型コンタクトセンターソリューションを提供する1社がインタラクティグインテリジェンスだ。
同社は2016年3月に、「クラウド2.0型」を標榜する新たなクラウド型コンタクトセンターソリューション「PureCloud」を発表している。その特徴は、マルチテナント型のネイティブクラウドアプリケーションであることと、コンタクトセンターだけでなく、企業内で利用する2つのクラウドサービスがセットになっていることだ。
このPureCloudは、InInとして初めてマルチテナントに対応したクラウドサービスとなっている。同社はもともと、オンプレミス型の「CIC(Customer Interaction Center)」を主力製品として提供してきた。そして米国では2004年に、CICをクラウド化した「CaaS(Communication as a Service)」を発表、提供を始めている。
米InIn本社のCIO(Chief International Officer)であるGary R. Blough氏によると、当時はAWSやSalesforce.comなどクラウドサービスの成功が話題になっており、同社がクラウド対応したのも「コマーシャル的要因が強かった」としている。また、クラウドサービスの特徴のひとつである「従量課金」を望むユーザーからの声が大きかったことも、クラウド化に踏み切った要因として上げている。
「とにかくクラウド化した」サービスであるCaaSは、シングルテナントで提供されていた。そのため、いざユーザーがサービスを始めるとなるとサーバーの手配や専用回線の設営などの準備が必要となり、立ち上げには3カ月以上を要していた。従量課金は実現したものの、どうしてもスピード感に欠けるサービスとなっていた。
マルチテナントでスピーディーな「本物」のクラウドサービスにする必要性を感じたInInは、100億円近くの投資をしてネイティブクラウドのサービス開発に取り組んだ。そして、3年後に誕生したのがPureCloudだ。
PureCloudの開発にあたっては、「AWSのマイクロサービスを活用することでスピード感、拡張性、安定性を実現できた」という。また、コールセンターの場合、イベントなどに合わせて一時的に席数を増設するといった機会も多い。AWS上で展開することにより、例えば「急きょ100席増設する」といった要望があった場合でも「一発で拡張できるようになった」という。
このPureCloudが提供するサービスは、コンタクトセンターサービスだけではない。InInはPureCloud開発にあたって、2つの機能を追加した。それがUC(Unified Communications)機能とIP-PBX機能だ。
UC機能を提供する「PureCloud Collaborate」は、社内コミュニケーションを支援するクラウドサービスで、主な機能はインスタント・メッセージ、ビデオ会議、コンテンツ管理、プロフィール検索など。
IP-PBX機能は「PureCloud Communicate」が提供する。自動電話受付や通話録音といったIP-PBXの電話機能が利用できる。SIP電話機やソフトフォン、PC、タブレットなど様々なエンドポイントに対応できるのも、このサービスの特徴だ。
これにコンタクトセンター機能の「PureCloud Engage」を合わせた3つのサービスを、同一プラットフォームから提供する。Blough氏によると「この先、さらに新たなサービスが加わっていく可能性もある」という。
また、現在のサービスについても深化を図るべく開発を進めている。例えば、Collaborateは、外部組織とのフェデレーション(連携)やモバイル対応を進めていく。Engageについても、コンタクトセンターの変化に対応した機能強化を引き続き行っていくという。
ユーザーはPureCloudを利用する際に、必ずしもサービスを3つとも利用する必要はない。いずれか1つのサービスだけを導入することができる。「PureCloud Engageのみを利用しているユーザーが、異なるベンダーのIP-PBXやUCがリプレース時期を迎えた際に、ひとつのプラットフォームにまとめてコストを削減し運用を容易にする」というのが上手なの使い方の例だ。