「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システムの取り込みの重要性に鑑みて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見を共有し相互に支援しているコミュニティです。IT Leadersは、その趣旨に賛同し、オブザーバとして参加しています。同倶楽部のメンバーによるリレーコラムの転載許可をいただきました。順次、ご紹介していきます。今回は、ローソン 執行役員 業務統括本部 副本部長の佐藤 達 氏のオピニオンです。
最近、”人財不足”が色々なところで話題になっています。ローソンも例外ではなく、店舗で働いて頂くアルバイト(クルーと呼びます)の不足、また私どものIT部門でも不足が顕著です。労働人口が減少しつつあることの影響はもちろんありますが、それが原因のすべてではありません。
どんなに人材が不足したとしても、皆様の生活インフラであるコンビニは24時間365日、商品やサービスを提供し続けなければなりません。しかし店舗で提供するサービスは環境や技術の進化とともに多様化し、店舗クルーが覚えなくてはいけないことが、どんどん増えています。昔のように商品を販売しているだけでは済まなくなり、これが人材不足に拍車をかけています。
そうした状況で必要なのは、やはり生産性の向上です。生産性の向上を実現してこそ未来がある、と考えておかなくてはなりません。そして、そのために必要なのが業務プロセスの見直しとIT化です。その時のキーワードが「デジタルとアナログの融合」だと考えています。別段、目新しい言葉ではありませんが、機械でできることは機械化する。浮かせた時間で、人は人にしかできないことをきちんと行うわけです。
特にローソンのお店の業務の中では、次のような課題があります。
●お客さまへ向ける時間をいかに創出しお客さまの満足度を高めるのか?
●いかに店内の管理業務を削減・軽減するか?
●システムを使うことにより、業務を標準化し、人による偏差を低減するか?
過去の成功例などに基づく今までの既成概念から脱出し、最新のIT技術を取り入れ、仕事の仕方を変え、プロセスを変革し、アウトプットを替えることが必要です。
とはいっても、企業として「絶対に変えてはいけない普遍的なもの」をなくさないようにすることは言うまでもありません。すべてを自動化して「巨大な自動販売機」になったコンビニなんて私自身、魅力を感じません(笑)。自動化が目的ではなく、業務を効率化し、標準化することにより、お店で働く「よい人」が集まり、お客さまにとって魅力ある良いお店ができて行くと確信しています。
これを実現していくためには”良いIT人財”が必要不可欠です。冒頭でも述べたように、やはりIT人材も不足していますが、それでも何とか確保して成長をリードしなくてはなりません。ではどうするか?自らの仕事を振り返ってみると、人材不足を嘆く前に反省しなければいけないことがたくさんありそうです。
そもそもローソンのIT部門は「人が働きたくなる魅力的な職場になっているか」といったことです。コンビニが社会で果たしていかなければならない役割を共有し、メンバーそれぞれが実現に向け自分がやらなければいけないことを自覚し、協力し、切磋琢磨していく環境が作れているでしょうか?あるいは成果を共有し、認め合い、次回に向けての糧としているでしょうか?
嘆いたり、指先を人に向けて非難するのではなく、まず自らの思考や行動を今一度見直す必要がある。その上で「より良い職場をつくり、より良い人財を確保し、より成長に導くこと」を進めるのが今すべき一番の「仕事」だと、やっとこの歳になって考えています。
ローソン
執行役員 業務統括本部 副本部長
佐藤 達
※CIO賢人倶楽部が2016年7月1日に掲載した内容を転載しています。
CIO賢人倶楽部について
大手企業のCIOが参加するコミュニティ。IT投資の考え方やCEOを初めとするステークホルダーとのコミュニケーションのあり方、情報システム戦略、ITスタッフの育成、ベンダーリレーションなどを本音ベースで議論している。
経営コンサルティング会社のKPMGコンサルティングが運営・事務局を務める。一部上場企業を中心とした300社以上の顧客を擁する同社は、グローバル経営管理、コストマネジメント、成長戦略、業務改革、ITマネジメントなど600件以上のプロジェクト実績を有している。
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