ブロックチェーンが、銀行業務やサプライチェーンなど幅広いトランザクション処理において、コストやリスクを引き下げる新しい方法を提供し始めている。一方でブロックチェーンを実ビジネスに適用するには問題点があるのも事実である。その問題点を解消するためのOSS(Open Source Software)プロジェクトとして「Hyperledger」が動き出している。
金融分野を筆頭にブロックチェーンの応用への期待が高まっている(関連記事『注目高まるFintech、インパクト先は金融に限らない』)。ブロックチェーンにより、中央集権型のコントロールなしに効率的で信頼できる分散型の台帳管理が実現できたり、契約内容や合意事項、ビジネスルールなどの記録/更新を関係者間で確実に共有したりできるようになるからだ。
ブロックチェーンのインパクトについて米ゴールドマンサックスは、調査レポートで次のように分析している。
「ブロックチェーン技術を現物市場の決済に使うことで銀行は、年間60億ドル(6000億円強)を節減できる。取引プロセスの簡略化だけでも年間20億ドル(うち人件費削減が9億ドル、システム運用費用が7億ドル)の経費削減が見込める。かつ年間30億~50億ドルのマネーロンダリングを防止できる」
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またロシア貯蓄銀行のVPであるンドレイ・シャロヴィ氏は、ブロックチェーンとFinTechの広がりにより「2026年までには、銀行という存在が消え去る」と語っている。国内予測でも、商務情報政策局情報経済課が2016年4 月28日に発表した『ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査報告書概要資料』によると、表1のようなインパクトが予測されている。
ブロックチェーンは3つのイノベーションを起こす
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ブロックチェーンがもたらすイノベーションとして、その適用先は大きく3つに分類できる(図1)。
応用1=取引の記録
銀行業務のうち貯金などのバックオフィス機能は今後、さらなるデジタル化が進み、セキュアで安全な分散台帳システムを実現するブロックチェーンに置き換わっていく可能性が大きい。既にスイスのUBSや英Barclays銀行では、バックオフィス機能へのブロックチェーンの適用実験を始めている。同分野での応用は、既存の金融機関だけでなく、スタートアップ企業の事業ターゲットにもなっている。銀行業務への適用が先行しているが、一般企業における事務作業も対象になっていくであろう。
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