[ザ・プロジェクト]
IoTとシステム統合で目指す「断トツ」と「真のグローバル」―ブリヂストン
2016年10月27日(木)佃 均(ITジャーナリスト)
経済産業省・東京証券取引所が発表した資料によると、ブリヂストンを攻めのIT経営銘柄2015/同2016に連続選定した事由は、「経営計画でITの利活用を掲げ、事業革新と企業価値向上に成果を挙げていること」だという。そりゃぁそうだろうけれど、その中身をもうちょっと詳しく知りたい——常務執行役員・武濤雄一郎氏にインタビューした。
5カ年経営計画の重点項目
名刺に記される武濤氏の肩書きは、「グローバルイノベーション管掌兼BIOC事務総長/オリンピック・パラリンピック室管掌兼CIO(Chief Information Officer)・IT担当」とある。BIOCは「ブリヂストン社内の組織委員会」の意味。
2014年の6月、同社はIOC(国際オリンピック委員会)との間でTOP(The Olympic Partner:1業種1社で上限12社)と呼ばれる最高位のパートナー契約を結んだ。2024年まで、夏季・冬季オリンピックの公用車のタイヤや建物の免震装置に同社の製品を優先的に供給する権利を持つ。イノベーション室兼BIOC事務総長がCIOを兼務するのは、「ITの利活用がカギ」というメッセージを社内外に発信しているのに等しい。
「当社は5カ年の中期経営計画を作ってまして…。毎年見直して、2014年版、2015年版という具合に更新しているんですが、その中でITは一貫して、技術やビジネスモデルを変革する重要なキーファクターと位置付けています」。
直近業績を見ると、2015年12月期の売上高は3兆7902億円、営業利益は5172億円、純利益は2842億円。5年間で売上高は25.3%増と好調そのものだ。それだけでなく本業の利益を示す営業利益は2.7倍、営業利益率は2011年6.3%だったが、2015年は13.6%と驚異的に増えている。2012年から、内外に「グローバル」「断トツ」という言葉が発信され始め、イノベーション・マインドと継続的な改善が好業績につながった。
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「タイヤを作って売る、というビジネスモデルからの転換を促し、支えていく一つの要素がITの利活用であることが確かです」。
IT予算額は明らかでないが、研究開発費は2011年度839億円が2015年度949億円と増えているものの、売上高に占める割合は2.8%から2.5%に下がっている。IT基盤や基幹系システムは別として、新規開発予算の割り振りに「選択と集中」の考え方を適用したのに違いない。
IoTタイヤは成果の1つ
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その成果の一つがIoTタイヤ技術だ。「B-TAG」(Bridgestone Intelligent Tag)は建設現場や鉱山で動く大型車両用のラジアルタイヤに独自開発のセンサーを装着し、運転者や運行管理者に空気圧や温度などの情報を送信する。タイヤの安全性、ひいては車両運行の安全性を高め、タイヤ管理業務の負荷が軽減する。発表は2012年の9月なので、「IoT」の取り組みとしては先駆的な例といっていい。
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2015年1月に発表した「MONITRIX」は、鉱山などで使用されるベルトコンベアの摩耗状態をIoT技術で事前に検知する。「MONITRIXは事業部門のアイデアが、研究開発テーマとなり、IT部門がサポートして製品化に結びつきました」という。高品質は製品を作って売るビジネスが同社の基盤であることに変わりはないが、ITを応用することで、メンテナンスしたりリユースするサービスの比率を高めていく。
もう一つのIoTタイヤは「CAIS」(Contact Area Information Sensing)だ。タイヤは路面と接触している唯一のパーツということに着目し、その中にセンサーを組み込んだ。それによって接地面の情報を収集、解析することが可能になった。
「2011年11月からネクスコ・エンジニアリング北海道と共同で試験を進め、すでに実用段階に入っています。真冬の深夜などに作業車を走らせて、凍結しているとかシャーベット状とかを検出できるんです。融雪剤を的確に散布できますし、迅速に走行車両への注意を表示できると期待されています」。
将来は普通車両用タイヤへの適用も考えられる。AI(人工知能)とビッグデータを組み合わせることで、マーケットのニーズを迅速・的確に把握するとともに、様ざまなサービスが実現する。併せて複数の車両が相互に通信して情報を共有する時代に備える考えだ。目標に掲げる「断トツ」の可能性が見えてきた。
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