[中国電脳事情]

【中国電脳事情セレクション】AI国家戦略、スマートシティ、ベンチャー海外進出…中国IT業界リーダー5社が提言

2017年3月30日(木)足立 治男

中国メディア各社の報道から、IT関連の最新動向を紹介する「中国電脳事情」。1カ月間に報じられた主要なニュースから重要なものをピックアップしてお伝えする。

 

シャオミCEO、「AI国家戦略」「新小売業と実体経済を刺激」「ハイテク企業の海外進出」を掲げる

―新浪サイエンス(2017年3月6日)

AI国家戦略の早急な実施を提言

 中国の大手新興通信機器メーカーのシャオミ(小米)CEOで、全国政治協商委員を務める雷軍氏は、次の5方面からAI国家戦略を実施するべきだとした。

  1. 国家レベルでAI成長に係る完成像の設計を行い、専門プロジェクトの計画を立てる
  2. AIの基礎理論研究を強化する
  3. 研究人材や技術者の更なる育成と、海外(香港、マカオ、台湾を含む)からの人材の招聘を強化する
  4. AIに係る産学研協同によるイノベーション共同体を積極的に構築する
  5. AIの産業化による成長を大々的に促進する

「新小売業」を成長させ、実体経済を伸ばすべきと主張

 続けて雷氏は、次の3方面から新たな小売業を成長させ、実体経済を伸長させるべきだとした。

  1. 「簡政放権(*1)」と「減政放権(*2)」を同時に行い、「新小売業(*3)」のさらなる効率化を保障する
  2. 農村市場への支援を強化し、「新小売業」による消費拡大を通じて、貧困からの脱出を支援する
  3. 構造的な減税の推進を継続し、「新小売業」のために経営環境の緩和を図る

(*1)政府機関による行政手続の大幅な簡素化と、国有企業等の経営管理権を政府から企業へ委譲すること。2014年に李克強首相が提唱した。
(*2)政府の業務を減らすこと。雷軍氏の造語と思われる。
(*3)オンライン(ネット・クラウド等)+オフライン(実態店舗・メーカー等)+物流(在庫管理を含む)を結合させた新ビジネスモデル形態の呼称。2016年10月にアリババクラウド云栖大会で同社CEOの馬云氏が提唱した。馬氏は「10年、20年先の未来には、EC事業者という名称は消えているだろう、ただ『新小売業』があるだけだ」とコメントしている。

国内ハイテク企業の海外進出を加速させるための施策

 雷氏は、現在、中国は国策の「一帯一路」という歴史的なチャンスに遭遇していると語り、次の3方面から中国のハイテク企業の海外進出を促進するとした。

  1. 「一帯一路」国際提携サミットフォーラム(*4)を定例化し、多様化した交流を常態化させることで、政策立案のための重要な場所とする。
  2. 「一帯一路」の沿線各国と共同でインターネットとIoTの建設を推進し、これらを最重要インフラとする。
  3. 中国政府の在外公館に「一帯一路特派員」を設置し、沿線各国の主要都市で中国企業の現地進出をサポートするインキュベーター(起業支援事業者)として機能させ、中国企業の海外進出戦略を更にアップデートさせる。

(*4)2017年5月14-15日に北京市で開催されるフォーラム。習近平主席がダボス会議で開催を宣言して話題となった。

工業・情報化省トップ、「中国EU商工会議所のメイドインチャイナ2025に対する報告書には誤解がある」と指摘

―新浪サイエンス他(2017年3月11日)

 中国でIT政策全般を司る工業・情報化省の部長(大臣に相当)である苗ウ氏は、2017年3月11日に北京市のメディア複合施設「メディアセンター」で記者会見を開催した。

 中国EU商工会議所(*5)は、2017年3月7日に中国が国策で実施している「メイドインチャイナ2025」に関する報告書を発表した。同報告書では、「メイドインチャイナ2025」の諸政策にはたくさんのWTO違反の疑いがある問題が存在しており、中国の製造業が生産過剰となり、保護貿易主義が台頭するのではないかと危惧されている。これについての苗氏の回答は下記のとおりである。

(*5)北京市に設置された欧州商工会議所の関連機関。多数の欧州企業と中国企業が加盟

 苗氏:中国EU商工会議所の報告書は中国語で58ページもあり、読み終わるまで丸3日もかかった。全体的には、同報告書で指摘された一部の意見やアドバイスは、今後の我々の業務にとってとても有効なものであるが、事実として、同報告書における一部の見解や説明には「メイドインチャイナ2025」に対する誤解がある。これについて、以下、3点から回答する。

 第一に、「メイドインチャイナ2025」の実施に際しては、政策立案時から、政府による指導と市場による主導を合わせて堅持するという原則を打ち出しており、それはさらなる市場化への改革を継続するものである。一方で、先進国は、自国の優れた技術や商品の中国向け輸出について、依然として厳しい規制を実施しており、グローバル化の流れに反する動きが進んでいるが、中国はこのようなやり方に反対する。中国は発展途上国であるから、先進的技術に対する需要は非常に大きく、「メイドインチャイナ2025」によって中国国内の産業構造を転換し、アップグレードすることで、中国国内のこうした先進的技術への需要に答えるのである。西側は技術の輸出を禁止し、中国国内には切迫した需要がある。では、「メイドインチャイナ2025」のような措置を取らずに、どのようにして民生の需要と国家・国防の安全を守るのか。

 第二に、中国EU商工会議所が、「メイドインチャイナ2025」に関する成長指標に疑問を持っている件であるが、例えば、中国国内ブランドの市場シェア率に対して指標を設定しているが、事実上、この指標はそれほど真剣に追及されていない。実は、中国EU商工会議所が引用した資料はいわゆる「緑書」(試案・意見公募のための資料)であり、その指標はあくまで予測的なものであり、強制力や拘束性のないものである。つまり、政府による行為ではない。

 第三に、「メイドインチャイナ2025」に関する措置は、中国国内のすべての企業に適用されるので、中国資本の企業と外資系企業は完全に同一視される。例えば、新エネルギー自動車の許認可条件である「全項目における開発技術と製造技術を掌握していること」についても、外資系企業にだけ適用されるものではなく、ましてや外資系企業の有する技術を強制的に中国に移転させるものではない。この条件を制定した当初の目的は、一部の企業が中国政府の補助金政策を悪用するのを防ぐことである。

 例えば、外部で買い揃えた部品だけで自動車を生産し、一定の利益を上げたら撤退するといったケースだ。このような状況は、ユーザーの損害だけでなく、その知的財産権を所有する企業の被害でもある。そのため、我々がこうした制限を設けるのは決して外資系企業を制限するためではなく、我々は中国資本の企業と外資系企業を同一視している。

 また、技術の移転についてであるが、条件にある「技術の掌握」とは、中国国内にその技術に関する研究開発拠点があるか、親会社が海外でその技術に関する研究開発拠点を設けているかに関係なく、その技術を保有していることが要求されるのである。つまり、我々は必ず中国国内にその技術に関する研究開発拠点を設けよとは要求しておらず、その技術を必ず中国に移転せよとも言っていない。そもそも、技術の移転に関しては企業との交渉であり、手段として強制できるものではない。

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