[中国電脳事情]

【中国電脳事情セレクション】「クラウド成長3年行動計画」で世界的クラウドベンダーの輩出を狙う中国、ほか

2017年5月31日(水)足立 治男

中国メディア各社の報道から、IT関連の最新動向を紹介する「中国電脳事情」。1カ月間に報じられた主要なニュースから重要なものをピックアップしてお伝えする。

中国の電子書籍ユーザーが3億人を超える

―新華社(2017年4月15日)

 2017中国デジタル閲覧大会が浙江省杭州市で開催された。会期中に発表された「2016年中国デジタル閲覧白書」によると、2016年の中国デジタル閲覧ユーザー(電子書籍ユーザー)は3億人を突破し、市場規模は120億元に達したという。成長率は25%で、前年より6.5ポイント上昇している。

 調査は電子書籍のみ閲覧/紙媒体のみ閲覧/電子書籍と紙媒体の双方を閲覧の3形態で統計を取り、前2つの比率は36.7%と23.9%になった。このほか、電子書籍を閲覧するユーザーは女性が男性を上回っており、一方で男性の方が課金への抵抗が少ないことも明らかになったという。

 中国で報道、出版、放送の部門を司る国家新聞出版広電総局のデジタル出版司長(日本の「局長」に相当)であり、中国音像・デジタル出版協会(旧「中国音像協会」)副理事長の張毅君氏は、「読者の年齢層によって読書の好みが異なるが、1970年代生まれの読者は歴史上の伝記や古典など、2000年代生まれは現代小説やSFを好む傾向がある」とした。そのうえで、「1980年代~1990年代生まれの世代がデジタル閲覧の主体となっており、その構成比率は全体の64.1%に上る」とコメントしている。

 電子書籍の今後について、張氏は、「国家による政策上の支持、読者環境の形成、優秀な作品の発表、ユーザー規模による開拓という、いわば『四頭馬車』による牽引があれば、成長率20%台は維持できる」との見解を示した。

工業・情報化省幹部による「未来のネットワークのための3カ条」

―新浪サイエンス(2017年4月17日)

 2017年4月17日~18日の2日間の会期で、「2017グローバル未来ネット発展フォーラム」が江蘇省南京市の「未来ネット小鎮」で開催された。工業・情報化省の通信発展司(司は日本の「局」に相当)の陳副司長は、「情報通信技術は、世界の技術革新の新たな高地となっており、すでに社会経済に巨大な変革をもたらしてきた」と述べ、ネットワークの未来について、次の3つのアドバイスを行った。

(1)ネットワークの基礎を強化すること。高速ブロードバンドや4Gネットワークのさらなる普及と最適化を推し進め、IoTやクラウド、ビックデータの応用技術を強化し、5Gの研究開発および実験を加速する。
(2)既存のネットワークを社会経済の各領域と融合させ、イノベーションを実現して未来のネットワークを模索する。特に次世代通信技術をフルに活用して、あらゆる分野での経済的合理性を向上させる。
(3)国内外とのあらゆる交流と提携を推進・強化し、学術分野と産業分野間のさらなる連携を強化する。

IPTVはCATVを超えられるか

―新浪サイエンス(2017年4月17日)

 中国では歴史的に全国規模でCATVが普及しているが、最近その動きに変化が表れている。2017年3月、北京市で「China Content Broadcasting Network 2017(CCBN)」が開催された。同イベントで、報道・出版・放送などの部門を司る「国家新聞出版広電総局」の科学技術委員会の専門家、杜百川氏は「2016年10-12月期に、中国のCATVユーザー数(事実上の世帯数)は、同年7-9月期比で215万世帯も減少した。これは同一年度内における初のマイナス成長である」と発言した。この発言にメディアが過剰な反応を示したことで、一躍大きな話題となった。

 実態はどうなっているのだろうか。国家統計局が発表した「2016年国民経済・社会発展統計公報」によると、2016年末時点における中国のCATVユーザー数は2億2300万世帯で、そのうち、デジタルCATVユーザー数は1.97億世帯であった。

 これを2015年実施の前回調査結果と比較すると、2015年末時点における中国のCATVユーザー数は2億3900万世帯で、そのうち、デジタルCATVユーザー数は2億200万世帯であった。要は、2016年に中国のCATVは約1600万世帯のユーザーを流失し、デジタルCATVは約500万世帯のユーザーを流失したことになる。つまり、現在の中国CATV事業者にとって、ユーザー流失の状況は、杜百川氏が指摘する前からきわめて深刻であると言える。

 では、IPTVのほうはどうであろうか。2016年にIPTVは中国で驚異的な急成長を遂げており、2016年末における中国IPTVのユーザー数は8672万8000世帯で、前年比で約4000万世帯ユーザー増となり、成長率は実に89%に達した。これによりIPTVは、中国の一般家庭がテレビを視聴する方法として、CATVと衛星放送に次ぐ第3の視聴方式(中国では地上波は普及していない)となり、シェア率も前年比で約10ポイント増加して20.5%となっている。

 ここで特筆すべきは、これらの統計には中国3大通信キャリアであるチャイナテレコム(2016年末におけるIPTVユーザー数6133万、前年比2095万の増加)とチャイナユニコムの2社分だけであり、まだIPTV事業者としての免許が交付されていない3番目のチャイナモバイルが2000~3000万ほど有するといわれる「動画サイト」のユーザー数はカウントされていないことだ。

 中国でIT部門を司る情報・工業化省直属の研究機関である中国信息通信研究院(旧・郵電省郵電科学研究院)の予測では、2017年末に中国IPTVユーザーは1億2000万世帯に達し、2019年には2億世帯を超えるとされ、そのユーザー規模はCATVを超えて、中国の一般家庭におけるテレビ視聴方法のトップに立つ。

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