「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、情報技術開発(tdi)によるオピニオンである。
コロナ禍を経験し、世の中の人々・企業・団体は新しい様式を構築する必要に迫られた。今も変化の渦中にある。そんな中、新しい様式を構築するためにも、ITの役割が増々重要になっていることは、だれもが認めるところだろう。では当社のようなITベンダーはどんな役割を求められ、あるいは果たすべきなのか? この点を考察してみた。
まず世の中の変化について、考えてみたい。2020年4月に発令された緊急事態宣言がトリガーとなり、多くの企業や学校において、Web会議システムなど各種のコミュニケーションツールによるリモートワーク・リモート学習が広く浸透した。生活面では、消費者の外出控えによりリアル店舗での買い物や外食が減少する一方、ネット通販やデリバリーサービスの利用が急拡大した。
パソナの淡路島本社移転など、企業や人が大都市中心部から大都市近郊や地方へ移転・移住する動きも出始めている。今後は、複数職業・企業への従事や労働時間帯の自由選択といった変化も含め、時間・空間に縛られないワークスタイルやライフスタイルといった社会の多様性が、否応なしに広がっていくことが想定される。
このような変化が進む中で、Web会議システムやコミュニケーションツールのような情報系のインフラは、GAFAに代表されるグローバルIT企業が提供するサービスがほぼデファクトとなっている。国内のITベンダーが新たにこのレイヤーを担うことは難しい。ではどこに活躍の場があるのだろうか。筆者は、デファクトのITインフラ上で、企業活動や個人の生活をより多様かつ豊かなものにする、国内事情に合ったITサービスを提供する役割があると考えている。
もう少し具体的に説明したい。国内ITベンダーが取るべきアクションは次のような課題への対応である。
①デジタル格差の解消
「デジタル格差」とは、IT(特にインターネット)の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済的な格差を意味する言葉だ。個人レベルでは所得差やさまざまなサービスへのアクセス、企業においては大企業と中小企業間での格差が社会的な課題として、すでに認識されている。今後、企業や人の移動、移住が加速した場合には、新しく生じるであろうさまざまなコミュニティ内でも格差が生じると考えられる。
そこで国内ITベンダーには、安い・早い・簡単なデジタルサービスを提供することで、これらの格差を解消し、社会全体の活性化と新しい社会の創造に貢献することが求められる。特に、より個人に焦点を当てたデジタルサービスの重要性が増し、シニア層の生活の活性化、障害者への生活サポート、子供・学生への教育支援等の需要が高まるのではないだろうか。
●Next:ITベンダーは地方活性化、行政デジタル化にどこまで寄与できるか
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