「ハイパースケーラー」と自ら名乗るIT企業に衝撃を受けた!
2022年9月8日(木)CIO賢人倶楽部
「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、トライアルホールディングス Executive Advisor 西川晋二氏によるオピニオンである。
コロナ禍で約2年半の中断を余儀なくされていた海外出張を再開し、2022年7月下旬の10日間、米国に出張しました。目的の1つが、米国小売企業におけるデータ活用に関してのアウェアネスを求めての、データ活用基盤を提供しているIT企業との情報交換でした。お会いした諸々IT企業の方々の中、異色だったのがMeta(旧社名:Facebook)との話でした。
今、世界的に大きなトレンドとなっているのが、米国の3大パブリッククラウドサービス、すなわちAWS、Azure、GCPの活用です。日本でも“クラウドファースト”というかけ声の中で、それを考えるのが優先事項の1つになっています。ところが、そんなトレンドにあっても、米国のB2C企業の大手は違います。莫大なコンピュータ資源を使って大規模なコンシューマー向けサービスを提供しているにもかかわらず、そもそもパブリッククラウドに依存していないのです。
自ら100万台規模のサーバーリソースを保有する企業はハイパースケーラー(Hyperscaler)と呼ばれます。そのような企業はいったい、どんなコンピューティング、データ活用基盤を保有・運営しているのか。それを知るのが出張の目的であり、Metaは話を伺うことができた1社です。お会いしたのはMetaのコンピューティング基盤で使われる独自サーバーのエンジニアリングのリーダーでした。
ざっくりとした数字ですが、Metaにはコンピューティング基盤のエンジニアリングとサポートに携わるエンジニアが約1万人いるそうです。一方、サービスの上屋側、つまり本丸である利用者向けサービスのアプリケーション開発はどうでしょう。Facebook、Instagram、WhatsAppの開発やメンテナンス、サポート、R&Dに所属しているのは、これもザクっとですが、1万人とのことです。つまり全エンジニアの半分がコンピューティング基盤に携わっている計算です。これだけの人員を1社で雇用し、自社のB2Cサービス提供を支えているのです。
お聞きした中で特徴的な事柄の1つは、独自のサーバーを企画して設計開発に踏み込んでいることでした。その内容の一部として、以下を行うということです。
●サーバーハードウェアは台湾企業へのODM(設計・生産委託)型での調達
●サーバーファームウェアは自社開発(性能要件ですぐれている仕組みを持つために必要)
●サーバーのOSやストレージ、ネットワークのハイパフォーマンス化
そのために、Facebookが発起人となって、2011年に「OCP(Open Compute Project)」を立ち上げ、現在も活発に活動しています。出来合いのハードに満足するのではなく、ユーザー企業にとってより有用なサーバーを企画・開発する目的です。ソフトウェアのオープンソースに範をとり、ハードウェアをオープンコラボレーションで設計・開発します(関連記事:高効率・低コスト・低環境負荷―OCPJが描く「ユーザーによる、ユーザーのためのデータセンター」/データセンター業界に変革をもたらすFacebook)。
なぜそこまでするのでしょう。MetaのサービスであるFacebook、Instagram、WhatsApp、Messengerのどれか1つでも使っているユーザーは2022年前半時点で月間アクティブユーザー(MAU)数が40億人に達しています。世界人口の半分を超えますし、万一の際の影響も計り知れません。これだけでも、「これはAWS、Azure、GCP依存ではありえない世界だ!」と、直観的にも分かります。
後日、MAUをサービスごとに調べると、Facebookが29億人、Instagramが10億人、WhatsAppが20億人でした。これらに次いで多い中国バイトダンス(ByteDance)のTikTok、中国テンセント(Tencent)のWeChatがいずれも10億人なので、Metaは圧倒的に大きなユーザー数を持つサービス提供者ということになります。
●Next:順調にメタバースが普及したら、MetaはどれだけのCPUパワーが必要?
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