世界経済の不確実性や地政学的リスクを背景にサイバー攻撃/脅威が拡大し、その対処がすべての企業における最重要課題の1つとなっている。ゼロトラストモデルの下でマイクロセグメンテーション製品を提供する米Illumioは、いかにして顧客をランサムウェアなどのサイバー攻撃から保護するかをミッションに取り組みを強化している。Illumio Japanが2024年4月に開催した発表会では、ゼロトラストの提唱者で同社エバンジェリストのジョン・キンダーヴォーグ氏が、その定義から改めて整理して、企業に取り組みの加速を訴えた。
「ゼロトラストに対して企業の意識が変化している」
2021年11月より日本でも事業を開始したセキュリティベンダーの米Illumio(イルミオ)。共同創業者兼CEOのアンドリュー・ルービン(Andrew Rubin)氏(写真1)は、「1年前、Illumioの日本におけるプレゼンスは非常に小さなものだった。この1年で基幹系インフラ保護を目的に採用企業が増え、パートナーシップも広がった」と日本市場での成長に言及した(関連記事:Illumioが日本で事業開始、ホスト間通信を細かく制御するマイクロセグメンテーションでマルウェア拡散を阻止)。
ルービン氏は2023年12月に、Illumio Japanとマクニカとの協業発表で来日しているが、このときと比べて、今回、日本の顧客と行ったさまざまなミーティングを通じて、ゼロトラストに対する認知度向上、意識の変化を体感したという(関連記事:マクニカ、マイクロセグメンテーション「Illumio」を販売、ホスト間通信を限定しラテラルムーブメントを阻止)。
現在、グローバルでサイバーセキュリティが最重要課題の1つとなっていることについて、背景には、世界経済の見通しの不確かさと地政学的不安定さがあると同氏は指摘。「そのような環境において、顧客がランサムウェア被害に遭わないよう強固に保護するミッションに取り組み続ける。とりわけ日本においても支援を強化していく」と語った。
ゼロトラストは「戦略」だ
今回、ルービン氏と共に、Illumioでエバンジェリストを務めるジョン・キンダーヴォーグ(John Kindervag)氏(写真2)も来日した。米調査会社Forrester Researchのアナリストとして勤務していた2010年に、ゼロトラストモデルの概念を発表し、提唱者として普及に努めてきた人物だ。
キンダーヴォーグ氏がゼロトラストに関するレポートを発表後、米国大統領がゼロトラストを導入するように連邦政府としての執行命令を出し、世界各国がその概念と重要性を理解し、新しい時代のセキュリティ戦略として認識するようになったという。
とはいえ、ゼロトラストに関しては現在、さまざまな定義・解釈が飛び交っている。同氏は米国大統領警護を例に挙げて、改めてゼロトラストの考え方を整理して示した。
大統領を警護するシークレットサービスは、「大統領はだれか」「大統領は今どこにいるのか」「だれが大統領に接近できるのか」を常に把握して行動している。「この3点は、守る対象が大統領でも、データや資産でも同様で、常に念頭に置く必要がある」とキンダーヴォーグ氏は指摘した。
●Next:大統領を警護するシークレットサービスの動きから、戦略としてのゼロトラストを整理
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