M&AでIT部門がはたすべき役割とは?─ITの分離・統合の要点
2025年2月20日(木)CIO Lounge
日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、ロココ 執行役員 エグゼクティブコンサルタントで、CIO Lounge正会員メンバーの岡島万樹氏からのメッセージである。
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企業成長の重要な手法であるM&A(合併・買収)は、ここ数年、国内外で件数・金額共に増加傾向にあります。国を超えた企業間の競争が激化する中、技術や市場を一気に獲得し、市場での存在感を高めようとする企業の戦略が背景にあります。特に日本では経営者の高齢化や後継者不足で事業承継に悩む中小企業の打開策、あるいは今も続く低金利や円安といった経済環境も、M&Aを後押しする要素になっています。
私は2017年~2024年の間、年商2兆円超の大手電子部品メーカーに情報システム担当役員として勤務し、同社の成長戦略であったM&A案件に立ち会う機会が多くありました。その経験の中で、買収交渉締結の前後にあるデューデリジェンス(Due Diligence)とPMI(Post Merger Integration)において、ITの重要性が増していると感じています(表1)。
デューデリジェンス | PMI | |
目的 | 買収対象企業の価値やリスクを評価 | 買収後の統合プロセスを円滑に進める |
時期 | 買収交渉・契約締結前 | 買収後 |
主な活動 | 財務調査、法務調査、事業調査、IT調査など | 経営統合、業務統合、人事統合、IT統合など |
ポイント | 正確な情報収集、客観的な分析 | 統合計画の策定、コミュニケーション、文化の融合 |
表1:デューデリジェンスとPMI
デューデリジェンスは、買収対象となる企業の価値やリスクなどを調査し、買収価格算定の基礎となるもので、従来は事業の実態や人事・財務・法務などが主たる調査対象でしたが、最近ではITも重要になっています。
PMIは、経営や業務基盤、さらには企業文化などに関して、買収後に行う一連の統合プロセスを指し、多くは被買収企業のそれらを買収企業に統合します。ITもその1つで、ITが経営判断や事業遂行に欠かせない経営基盤であるだけに、PMIによって問題が生じるような事態は避けなければなりません。したがって、買収前のIT環境から買収後のIT環境にいかに円滑に分離し、統合するかが重要な要素になります。
ここでは、M&Aにおける買手側の視点で、私自身の経験からITの分離・統合の要点を説明したいと思います。
●Next:IT分離・統合でなすべきこと─M&A案件におけるIT部門の任務
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