スポーツ用品店チェーンのアルペン(本社:愛知県名古屋市)は、長年にわたる運用で硬直化したデータ基盤を段階的に拡張し、内製開発を中心とする、変化に強いデータマネジメント体制を確立している。2025年3月7日に開催された「データマネジメント2025」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム〈JDMC〉、インプレス)に、同社 執行役員 デジタル本部長兼情報システム部長の蒲山雅文氏が登壇。元店舗スタッフが9割以上を占めるIT部門を率いて、データ活用を組織に浸透させるまでのステップや、実践に基づく教訓を明らかにした。
1972年創業のアルペンは、大型のスポーツ用品店やゴルフ、アウトドアの専門店を主業する大手チェーンだ。全国で約400の店舗を展開し、近年は東京、名古屋、福岡などの都心部に大型の旗艦店をオープン。2024年6月期の連結売上高は2529億3600万円に上る。
同社 執行役員 デジタル本部長 兼 情報システム部長の蒲山雅文氏(写真1)が牽引しているのが、内製開発を中心とするデータマネジメント体制の構築だ。長年にわたる運用で硬直化したデータ管理の仕組みや組織を、今日のビジネス要件に合わせて進化させた。

取り組みの背景として、蒲山氏は同社を取り巻く状況を説明した。その1つが小売業界の変化の速さだ。「業界の変化に追従するためには、(情報システムにも)変化の速さが求められる」(同氏)。素早い対応を可能にする手段としたのが内製開発である。
小売業界はデータ量の多さも顕著であるという。約400の店舗でSKU(Stock Keeping Unit:最小管理単位)の数は約1000万、会員プログラムへの登録者数も約1000万を数える。「膨大なデータ量がシステム性能の劣化やコスト増大の要因だった」(蒲山氏)
組織の特徴の1つが、IT部門の人材の95%が元店舗スタッフであることだ。新入社員は店舗に配属し、その一部を本社に配置転換するため、ビジネスへの理解度は高くも、IT部門としての専門性は育ちにくい面があったという。
一方で、同社では若い経営陣の下で挑戦を好む社風が育まれており、「新しいものへの拒否感が薄く、前向きで協力的」(蒲山氏)。このことが、積極的な内製開発やデータ活用の取り組みを支えているともいえる。
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