山口県下関市で最終処分場を運営する住吉工業(本社:山口県下関市)は、現場の担当者みずから、最終処分場における放流水の水質を予測するAIモデルを開発した。効果の試算によると、年間で約504時間の労務時間と100万円以上の人件費を削減できる。ノーコード時系列データ分析ツール「Node-AI」とデータサイエンティストによる技術サポートの伴走支援を提供したNTTコミュニケーションズ(NTT Com)が2025年5月15日に発表した。
最終処分場で発生する排水の水質は、環境省が定める放流基準を満たす必要がある。法律は月1回以上の水質検査を義務付けているが、住吉工業は自主的に日常点検を365日実施している。ポータブルpHメーターで7箇所を測定し、各地点のpH値と水温をExcelで管理している(図1)。

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一方で、昨今の人手不足の状況下、休日点検時における労働災害を未然に防ぐためにも、休日対応を減らすことが急務だった。そこで、既存の水質管理レベルを維持したうえで、従業員の休日出勤を削減することを目標に、AIを使って水質の変化を予測するシステムを構築した(図2)。

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住吉工業の担当者が、各測定箇所における過去の水質管理データ(pH値、水温、外気温、雨量)をAIに学習させ、2日後の放流口における放流水のpH値を予測するAIモデルを構築した。この上で、予測結果が法定基準値(pH5.8~8.6)に対して十分に余裕を持ったpH6.1~8.3以内であれば、休日の点検業務を実施しないという自主的な基準を定めた。
AIで予測したpH値と、後日実際に測定したpH値を比較したところ、プラスマイナス0.2の誤差範囲で予測できた。これにより、休日出勤を完全になくすことで、年間約504時間の労務時間、年間100万円以上の人件費を削減できる試算結果を得た。
なお、水質予測システムは、プログラミングの知識がなくてもノーコードで時系列データを分析可能なツール「Node-AI」を使い、現場の担当者みずから構築した(関連記事:NTT Com、AIデータ分析ツール「Node-AI」をAWS Outpostsでオンプレミス提供)。
Node-AIは、IoTデータ、売上データなどの時系列データの分析に特化したクラウド型の開発ツールである。数値予測や異常検知などの課題を解くためのAIモデルを開発できる。Webブラウザ上のドラッグ&ドロップ操作で前処理や学習などのカードを直感的に組み合わせるだけで、プログラミングをせずにAIモデルを開発できる(図3)。

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