[市場動向]

40km離れたデータセンター間で1.6TBのデータを68秒で転送─NTTドコモビジネスがAPNとRDMAで実証

データセンターの分散化需要を想定

2025年8月27日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

NTTドコモビジネス(2025年7月にNTTコミュニケーションズから社名変更)は同年8月27日、データセンターの拠点分散化を見据え、2つのデータセンター間で大容量データを高速に転送する実証の結果を発表した。約40km離れた三鷹と秋葉原のデータセンター間をAPN(全光ネットワーク)で接続し、自社開発のRDMA転送ツールを用いて1600GBのデータを約68秒で転送することに成功している。

 NTTドコモビジネス(2025年7月にNTTコミュニケーションズから社名変更)は、サーバーを複数の拠点のデータセンターに分散配置する用途を見据え、遠隔のデータセンター2拠点間で1600GBの大容量データを高速に転送する実証を行った。

 約40km離れた三鷹(東京都三鷹市)と秋葉原(東京都千代田区)の両データセンター間を帯域800Gbit/sのAPN(All-Photonics Network:全光ネットワーク)「800G-ZR」で接続した環境を構築し、自社開発のRDMA(Remote Direct Memory Access)転送ツールを用いて遠隔転送を試みた(図1)。

図1:データセンター間で大容量データを高速転送する実証の概要(出典:NTTドコモビジネス)
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 メインメモリー上のファイルシステム(tmpfs)に格納した1600GB(200GBのデータを8セット)を転送した。ネットワークカード(NIC)に、RDMAに対応した「NVIDIA ConnectX-6 DX 100GbE」を8個用いている。

 NTTドコモビジネスが今回の検証に合わせて開発したRDMA転送ツールは、従来のデータ転送手段(scp/rsyncの場合で約389秒)の6分の1となる約68秒で転送が完了した。RDMA転送により、CPU使用率を約20%から約5%へと5分の1に抑えている(図2)。

図2:独自に開発したRDMA転送ツールと既存データ転送手段との性能比較(出典:NTTドコモビジネス)
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 同社によると、RDMAと対応NICの組み合わせが可能にしたデータ転送手段であり、CPUによるプロトコルスタックの処理をバイパスしてホスト間の通信遅延時間を短縮。CPUを介さずにメモリー上のデータを別のホストのメモリーに転送できる。「RDMAは、長距離通信に利用すると転送処理の品質が低下する課題があるが、接続の並列化やメッセージサイズを大きくとることで転送を高速化している(同社、図3)。

図3:RDMA転送ツールが採用した高速化手法(出典:NTTドコモビジネス)
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 今回の実証では、距離3000kmという長距離でAIモデルを分散学習する検証も行っている。三鷹と秋葉原の両データセンターを対象に、3000kmの長距離通信を疑似的に再現した。この分散環境で大規模言語モデル(LLM)の事前学習をさせたところ、同一データセンター内で学習させた場合と同等(1.07倍)の時間で学習が完了した(図4)。

図4:距離3000kmという長距離でのAIモデル分散学習実験の構成(出典:NTTドコモビジネス)
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写真1:NTTドコモビジネス エバンジェリストの張暁晶氏
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 NTTドコモビジネスは、2024年と2025年に同様の実証を行っている。2024年は長距離通信をシミュレートせず、物理的に約40km離れたデータセンターで実証。2025年にはデータセンターを3カ所に増やして実証している。そして今回、3000kmの長距離通信での分散学習を実証した(関連記事NTT Com、全光ネットワークで接続した2拠点でAIモデルを分散学習、単一拠点と同等の性能)。

 発表会で、同社エバンジェリストの張暁晶氏(写真1)は、データセンター分散化の需要について次のように説明した。「GPUサーバーのインフラ需要が増えているが、データセンターにおけるラックあたり電力密度、冷却能力、床荷重といった制約から、やむえずデータセンターを分散するケースがある。また、耐障害性などの観点では、あえてデータセンターを分散する需要もある」。

 NTTドコモビジネスは、今回の実証の成果から、拠点分散化によるデータセンターの柔軟な利用をユーザー企業に促進する。また、同社らが掲げる「AI-Centric ICTプラットフォーム」や「IOWN」といった次世代ITインフラ構想に成果を反映していくとしている。

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