[「人間中心のAI」で企業変革を加速する─生成AIの進化・活用のこれから]
生成AIに信頼を寄せる若者たち─「AIネイティブ」が企業に突きつける課題:第6回
2025年9月8日(月)荻野 調(博報堂DYホールディングス Human-Centered AI Institute Executive Partner)
AI技術は日々進化を遂げ、社会実装が現実の段階に入っているが、多くの企業ではまだ部分的な活用にとどまり、AIに対する脅威や不安のマインドが依然として存在する。あるべき姿は「人間中心のAI活用」であり、その推進にあたって何をなすべきか。本連載では、具体的なアプローチを交えながら、企業がAIをどのように向き合い、活用し、未来の成長に役立てていくかを考察していく。第6回では、AIネイティブの特徴と企業に求められる対応について説明する。

若年層の多くは生成AIの利用に躊躇がなく、さまざまな活用を試みている。博報堂DYホールディングスのHuman-Centered AI Instituteが全国15~69歳の男女を対象に実施した意識調査「AIと暮らす未来の生活調査2024」では、「AIネイティブ」という新しい世代の登場に注目している。調査の結果から、AIは単なる便利なツールから、人に寄り添い感情的なサポートを提供する存在へと役割が変化しつつある状況が見てとれる。
このような変化を踏まえ、企業はどのようにAIと向き合う必要があるのだろうか。以下、AIネイティブの登場とその行動様式にフォーカスしながら考察してみたい。
10代を中心に、生成AIとの共存が当たり前に
ChatGPTの登場に端を発した生成AIブームは、一般生活者への普及も瞬く間に進んだ。今では利用方法にさまざまなバリエーションが生まれ、変化が続いている。
AIと暮らす未来の生活調査2024によると、生成AIの認知率は前年の28.7%から55.7%へとほぼ倍増した。毎月利用する人の割合も8.0%から17.9%へと大きく伸長している。
同調査で特に注目されるのが、AIネイティブの台頭である。AIを使いこなしていると自認する割合は、20代で35.1%、30代で25.1%であるのに対し、10代は63.6%と圧倒的に高い結果となった。10代はすでに生成AIを使いこなしている層が多数派だ(図1)。

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調査結果において注目すべきなのが、AIが単なる便利なツールではなく、「人に寄り添い、感情的サポートを提供する存在」と認識されているという点である。
「AIは困難な状況で自分を励まし、サポートしてくれる存在かどうか」という問いに対しては、10代の59.2%が肯定的に回答している。また「AIは自分の感情に寄り添った対応をしてくれるか」という問いに対しては、10代の54.8%が同意している。この結果からも、生成AIは、情報の解釈や伝え方、さらには対話における情緒的応答といった、人間のEQ(Emotional Intelligence Quotient:感情的知性)に相当する価値をもたらしていると言えるだろう。
●Next:AIネイティブの登場、企業には何が求められるか
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