米国発の金融危機により株式市場全体は大幅に下落しているが、9月中旬時点でのトレンドマイクロの株価は堅調だ。背景には、同社が来期以降、本格的に展開する新サービス、「Smart Protection Network(SPN)」への期待感があると考えている。
トレンドマイクロの製品「ウィルスバスター」を利用している人は、バージョンアップのたびに重くなったと感じるのではないか。自宅のパソコンで同製品を利用している筆者も、その1人だ。“重くなる”大きな原因は、1セキュリティ攻撃の増加→2攻撃から防御するためのパターンファイル数および頻度の増加→3メモリの大量消費およびアップデート頻度の増加、にある。
事実、ここ数年の間、セキュリティ攻撃は増加の一途を辿っている。5年前はCode Red, Nimdaといった全世界に蔓延するアウトブレーク型ウィルスが猛威をふるっていた。しかし、現在ではメールやWebによるフィッシング(正規のメールやWebサイトを装い、暗証番号やクレジットカード番号を詐取する詐欺)が急増。しかも攻撃者はフィッシングを検知されないよう、特定の組織・地域に絞った攻撃にシフトしつつある。トレンドマイクロとしては、あらゆる攻撃を検知し、その対策を迅速におこなうため、結果的に処理が重くなる現象につながっているのだ。
問題を解決するために辿り着いたのが、トレンドマイクロがいうところの「in the cloudアプローチ」である。同社の解析センターでインターネット上に存在するWebサイトやメール、ファイルを収集・精査し、危険度に基づいてスコアリングする(レピュテーション)。クライアントはWebへのアクセス、ファイルダウンロードなどの前に、同社のサービス(クラウド)にアクセス。目的サイトがレピュテーションの閾値を超えた場合、クライアントはアクセスできない仕組みになっている。セキュリティのSaaSと言える。
この利点として、1クライアントはクラウドにアクセスするだけで済むので自社でサーバーなどを設置する必要がないことに加え、2大量のパターンファイルを保持する必要がないので、リソースが貧弱な機器でも重さを感じずに使えることがある。
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