複数拠点の従業員の勤務状況を正確に把握する上で、勤怠管理システムに注目が集まっている。労働者の雇用形態が多様化し、全従業員の給与算出業務の負担が増していることも背景にある。そこで今回、選択肢の多い勤怠管理ASP/SaaSに焦点を当てトレンドを整理する。
従業員の出退勤時間を把握するのに紙のカードに印字するタイプのタイムレコーダを利用している企業はいまだ少なくない。だが、多くの支店や店舗、工場を展開する企業にとって、拠点ごとのタイムカードを毎月収集するのは手間がかかるし、給与を算出するために出退勤時間を逐一集計する作業負担も大きい。
こうした課題を解決するものとして勤怠管理システムがある。出退勤時刻を電子的なデータとして取り扱い、全従業員を対象に自動収集するのはもとより、雇用形態や給与体系、勤務時間など従業員ごとに異なる労働条件を一元管理し、出勤時間に応じた給与算出作業を効率化する。勤務状況を正確に把握することで、企業は残業代の不払いや不正な残業による賃金の過払いを是正することができる。
給与計算システムとの連携は不可欠
勤怠管理システムの基本となるのは、従業員が出勤、退勤した際の時刻データを自動収集する機能だ。従業員自らが時刻を記録(打刻)する方法は利用場所や業務内容に応じてさまざまな選択肢がある(詳しくは後述)。収集した打刻データは給与計算ソフトなどが取り込めるようCSV形式のファイルなどにして出力する。そのほか、給与算出に必要な休暇取得数も管理。休暇を申請するワークフロー機能を備えるほか、従業員の勤務スケジュールを作成できるものが多数を占める。
給与計算ソフトやERPパッケージの一機能として勤怠管理を備えるものもあるが、すでに給与計算システムを導入している企業向けに、勤怠管理機能を単体で提供するベンダーも多い。
提供形態はパッケージ型と、ASP/SaaS型に分かれる。パッケージ型の場合、各PCにインストールしてスタンドアロン型として利用したり、サーバーにインストールし、タイムレコーダやPCの打刻情報をネットワーク経由で収集したりできる。導入にはある程度の初期投資が必要だ。これに対しASP/SaaS型は、1ユーザーあたり月額数百円から利用でき、初期導入コストを抑えられる。法律改正においてもシステムのアップデート作業をユーザー側でしなくてよい点などが売りだ。「これまでパッケージ型を導入する企業が多かったが、導入コストや利便性を考慮し、ASP/SaaS型を導入するケースが増えている」(アマノビジネスソリューションズ 開発企画課企画チーム 係長 新田幸治氏)。
そこで本稿では、勤怠管理機能を主とする、ASP/SaaSを取り上げる(表)。サービスを選択する上でチェックすべきポイントを見ていこう。
用途に応じて打刻手段は使い分けを
出退勤時間を記録する方式は、ICカードや生体認証など、さまざまなバリエーションがある。拠点ごとのニーズに応じて選択することになるが、勤怠管理サービスごとに利用できる方式は限られているので、導入の際は打刻方式とセットで検討しなければならない。
昨今は打刻デバイスとしてICカードを利用するケースが増えているが、その中でも注目株は携帯電話が備えるICカード機能の利用である。個人所有の携帯電話を流用することで、ICカードなどを全従業員に発行する手間やコストを抑えられる。アルバイトがなかなか定着せず頻繁に入れ替わる職場や、短期で派遣社員を利用する場合においては有効だ。
携帯電話の場合、端末内蔵のICチップを利用し、専用のタイムレコーダやカードリーダにかざすことで出退勤時間を登録する。ICチップ非搭載の場合、専用アプリケーションやブラウザ画面を起動して打刻できるものもあり、これらはタイムレコーダやカードリーダさえ不要となる。
携帯電話のGPS機能を利用し、外出先から打刻できるサービスもある。ヒューマンテクノロジーズの「King of Time」は、出退勤時間とともに現在の位置情報も収集する。外回りの多い営業員が直行した外出先から打刻できるほか、きちんと顧客を訪問しているかどうかを確認するのに役立つ。携帯電話のカメラを使い本人の顔写真も送信可能。「店舗では早退した従業員の代わりに、本人になりすまして他の従業員がICカードや携帯電話を使って打刻してしまうケースがある。カメラで本人確認することで不正を防止し、賃金の過払いを抑止する効果を見込める」(ヒューマンテクノロジーズ 執行役員 ビジネスソリューション事業本部 事業本部長 奥畑和行氏)。
本人のなりすましを防止するため、アナログトゥエルブの「TimeCa〜D」やエイ・アイ・エス「ちゃっかり勤太くん」などは指紋認証、静脈認証をサポート。シフトの「勤給解決」は色分けしたバーコードと顔写真をWebカメラに読み込ませて本人を特定する。
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