[木内里美の是正勧告]

ユーザー企業はシステムの主権を取り戻せ!

2011年3月9日(水)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

システム開発に伴うトラブルが依然として絶えない。日経コンピュータ誌の名物記事「動かないコンピュータ」は、終息傾向をみて1996年に一旦掲載が中断された。しかし2001年に復活して以来、事案に事欠かない。原因は複数の要素が絡み合っているが、その1つはベンダーの不明朗さである。

直らぬ3つの不明朗

その問題を本誌2010年4月号の本欄「ベンダーは契約を逃げ道にするな!」でも指摘したが、顕著な改善が進まないようなので再び書いてみる。筆者が指摘したい不明朗は3つある。品質、納期、価格である。品質についてはそれを担保する仕組みがない。開発を請負うのに資格は要らないし、不良不適格業者も排除されない。

大手ベンダーはアジャイル開発手法を敬遠気味で、手戻りを起こしやすいウォーターフォール一辺倒の姿勢が改まらない。品質を追求するならせめて数理理論に基づいたフォーマルメソッド(形式手法)くらい取り入れてほしいものだ。一部でそれに向けた活動(DSF: Dependable Software Forum)が始まっているが、まだ実証実験段階である。ぜひ浸透させてもらいたい。

納期については、まずルーズな商慣習を改めなければならない。変更管理を厳格にし、契約書には工期遅延のペナルティを明記すべきである。3つめに挙げた価格の不明朗は、最もトラブルにつながり易いものである。JISA(情報サービス産業協会)が標準積算、標準単価を構築しようとしているが、見積もりの恣意性を排除できていない。この3つの不明朗が改善されれば、開発トラブルが減少することは間違いない。

発注側が抱える当事者意識の欠如

発注側であるユーザー企業が抱える問題は、より大きい。当事者意識が欠如し、ベンダー依存が体質化していることがそれだ。筆者が知る限り、この傾向は1990年代の半ば頃から強くなったように思う。それ以前は、もっと主体的にシステム開発に取り組んでいた。

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