[製品サーベイ]

仮想テープライブラリ(VTL)製品比較─テープ運用のスタイルを変えずにディスクの恩恵を受ける現実解を探す

仮想テープライブラリ(VTL)

2011年12月14日(水)緒方 啓吾(IT Leaders編集部)

テープストレージを前提としたバックアップソフトや運用プロセスなどを生かしながら、技術革新が著しいディスクの世界にソフトランディングしたい。そんなニーズに応えるのが仮想テープライブラリ(VTL)である。主要製品の動向を調べた。

 企業が取り扱うデータ量は増加の一途をたどり、ストレージに対する要件は、複雑かつ高度なものになっている。ベンダー各社は次々と新技術を投入し、しのぎを削っているのは周知の通り。今、IT業界で最もホットな市場の1つといっていいだろう。

 ストレージと一口に言っても、そのカバー範囲は広い。業務で「日々使う」データの格納場所としての用途もあれば、「万一に備えた」リカバリ用途もある。データを実際に格納するデバイス(メディア)に着目すると、ディスクやテープ、SSDなどいくつかの種類がある。目的に応じて、適材適所で多様なストレージ製品を使い分けているのが現状だ。

慣れ親しんだテープ運用をあえて変更したくないとの声

 バックアップやアーカイブなど、「頻繁にアクセスすることのないデータを長期的に保存する」といった用途では、メディアとして長らく「テープ」が使われてきた。コストパフォーマンスが高かったのが一番の理由だ。

 もっとも、ディスクの高密度化や価格低下はどんどん加速している。しかも、ディスクはテープに比較してコピーが速かったりメカニカルなトラブルが少ないといった特徴がある。自然に考えるなら、テープはどんどんディスクに置き換えられることになるだろう。

 ところが、そう簡単にはいかない場面も少なくない。例えばメインフレームで構築したレガシーシステムに、テープを前提としたバックアップの仕組みが作り込まれているとしよう。ここでの「仕組み」とはバックアップ用ソフトのみならず、作業の手順やルールといったノウハウも含むものだ。

 もしディスクに変更すると、それに対応したソフトを新規に用意しなければならない。新たな作業プロセスを覚え定着させる労力も伴う。安定的に運用できているシステムならば、あえて余計な手を加えたくないというIT部門の「本音」がそこにある。

 “テープ文化”を踏襲しつつ、技術革新が著しいディスクの世界にソフトランディングできないものか…。こうした発想から生まれた製品が仮想テープライブラリ(VTL:Virtual Tape Library)である。

既存資産を活かしつつディスクのメリットを

 VTLの中核となるのは、ホストに対して、「仮想的に」テープライブラリを再現するソフトウェアだ。一種のエミュレータである。実際はディスクを使った装置でも、バックアップなどのツールからは、あくまでテープライブラリとして見える。

 アクセス性能やコスト当たりの容量に優れるディスクを利用することで、バックアップやリストアの処理時間短縮や、テープメディアの管理コスト削減などにつながることが期待できる。コピーが容易なために冗長性を高めやすい点、機械的な動作が限られトラブルが少ないのもディスクの優位点だ。

 既存のテープライブラリを残しながらVTLを導入するという選択もある。VTLの先にテープライブラリを接続。リストアが必要なバックアップ用途ではVTLに保持、法令順守などを目的とした長期保管はテープに書き出すといった運用だ(図1)。ディスクとテープを使い分け、性能とコストの最適化を図る「D2D2T(disk to disk to tape)」のハブとしての役割を担う。

図1 既存システムに変更を加えることなく、ディスクストレージを活用する。テープとの併用も可能だ
図1 既存システムに変更を加えることなく、ディスクストレージを活用する。テープとの併用も可能だ

アプライアンス型が主流、プラスアルファの機能で差異化

 もう少し詳しくVTL製品の実体を見てみよう。現在、主流を占めるのは専用ソフトとディスクストレージを組み合わせたアプライアンス型だ。RAIDやディスク二重化などによる信頼性確保、未使用時のディスク回転停止による省電力化といった機能を、多くの製品が備えている。

 少数ではあるが、ファルコンストアの「Falconstor VTL」のようにソフトウェア単体で提供しているものもある。このタイプでは、ユーザーが所定のサーバーにインストールして利用することになる。

 ディスクストレージやバックアップソフトウェアなどのオプションとして、VTL機能を提供するものもある。日本クエストのバックアップソフト「Net Vault Backup」などが代表例だ。アプライアンスには性能面で一歩譲る部分があるが、小規模のテープライブラリを利用するユーザーにとって有力な選択肢となる。

 いずれも、テープライブラリのエミュレーションという基本機能に大きな違いはない。各社は、ディスクを効率的に使用する重複除外機能や、遠隔に配置する別のVTL製品とのレプリケーション機能などの付加価値を差異化ポイントに挙げている。

 VTL製品は必ずしもメインフレーム環境を対象とはしておらず、オープンシステム向けに提供する機種もある。ただし、OSが辿ってきた歴史的経緯から、オープン系システムはテープ装置との親和性が相対的に低く、ディスクだけの運用に切り替えるケースも見られる。ストレージ製品の市場調査を手がけるテクノ・システム・リサーチのレポートによれば、2010年時点の国内のVTL市場の規模は55.3億円。うちメインフレーム向けが45.3億円と市場の大半を占めている。

●Next:国内の主要なVTL製品一覧

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