企業ITに携わるプロフェッショナル達に、自分の書棚から特に印象に残っている3冊を選んでもらう「私の本棚」。今回は、カブドットコム証券 執行役 事務・システム副本部長 兼 システム部長の阿部吉伸氏に聞いた。
日頃、IT戦略を描くときに「先入観にとらわれたくない」という強い思いがあります。名が通っていないベンダーの製品や、導入実績に乏しい製品であっても、機能が優れていれば是非使いたい。もちろんリスクは伴うけれど、他社の真似なんかしていたら、競争優位に立てるシステムなんて実現しませんからね。目的に合致する合理的な方法は何かを見極める、ピュアな目を持つことが大切なんじゃないでしょうか。
そんな思いもあってか、書店に足を運んでも「平積みになって人気がありそうだから」という理由で本を買うことはありません。本の並べ方って、版元や取次がどの程度プロモーションに力を入れているかによっても随分と変わりますから。自分の感覚を信じて、これは読みたいという本を吟味するようにしています。
「資本主義はなぜ自壊したのか」は、参加を予定していたあるイベントで中谷巌さんが講演することを知り、予習を兼ねて読みました。所得格差の拡大や絆の崩壊など、米国型のグローバル資本主義の弊害を指摘する一方で、何が人々の幸せにつながるかといった視点が盛り込まれています。かつて市場原理主義の急先鋒だったはずの氏が書いているだけに重みもあります。
証券会社の生業は、金融商品を売買する場を運営すること。最近では、膨大な情報の提供やマイクロ秒単位の取り引きなんかが求められていて、ともすると“煽る”ビジネスにも映ってしまいます。自分の仕事の付加価値って何なんだろうという思いが常に頭のどこかに引っかかっていただけに、この本には引き込まれました。社会にどう貢献していくべきかを改めて考えるよいきっかけになった一冊です。
「こんな人と組織が生き残る」も、大久保寛司さんの講演を拝聴したのを機に手にとりました。組織を活性化する心構えと手段が書かれているのですが、基本は仕事を楽しくすることの重要性を説いています。
成功した人の中には「とにかく俺の言う通りにやれ」と部下に接するタイプが少なからずいますよね? 自戒を込めて言うと、それじゃダメって内容です(笑)。思いやりをもって話をよく聞き、相手の目線に立ってコミュニケーションすること。簡単なようでいて実践がなかなか上手くいかないこのテーマを、豊富なエピソードと共に掘り下げていて参考になります。組織の上に立つ人にお勧めです。
ビジネス書が続いたので、最後は「ゴルフで老いる人若返る人」を紹介しましょう。著者はシングルプレーヤーのお医者さんです。アンチエイジングに対する深い知識を生かしながら、“体に悪くて老いを加速するゴルフ”をしないためのポイントがまとめられています。とにかく面白いですよ。
私もゴルフをたしなみ、例えばユーザー会で知り合った方々などとラウンドするのはとても楽しいし貴重な機会です。この本を読んでからはゴルフに対する考えが多少なりとも変わりました。スイングの方法論などに過度に固執することなく、80歳になっても楽しめるゴルフを目指して行きたいと思ってます。
こんな人と組織が生き残る
─仕事楽しくしてますか?
大久保寛司著
ISBN: 978-4120037252
中央公論新社
1575円
ゴルフで老いる人若返る人 [新装版]
齋藤真嗣著
ISBN: 978-4763130389
サンマーク出版
1470円
- 阿部吉伸氏
- カブドットコム証券 執行役 事務・システム副本部長 兼 システム部長
- カブドットコム証券の前身となる日本オンライン証券に入社。先進的なハードウェア/ミドルウェアを使い、顧客の利便性向上と他社との差異化を図ることを念頭に置く。新ビジネスの企画や開発設計にとどまらず、デバッグやネットワークトレースに勤しむこともしばしば
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