少々ハードルの高い仕事が舞い込んできた時に、よしやってやろうと臨む習慣は、個人の成長にとってとても大事なことだ。今回は「リスクテイク」という視点とからめて考えてみる。
ビジネスパーソンとして成長を望む若手に何か1つだけ助言できるとすれば、「リスクを取る」ことの重要性を伝えたい。これは1%の可能性にかけよとか、ハイリスクなビジネスを目指すべき、などと言っているのではない。少々の困難にぶつかった時も逃げない姿勢があれば、成長できるということである。新しい仕事に挑戦してうまく行けば、それまでにない自信を得られるだろうし、うまく行かなければ何が原因だったかを分析して次回に活かすことができるだろう。いずれにせよ、成長の糧となる。
何か頼み事した時に、すぐさま「ちょっと難しいですね。なぜなら…」と返すタイプの人がいる。IT業界においても、とりわけエンジニアにはこのタイプが割と多いように思われる。主張としてはこうだ。「私のできることはAとBです。その範囲内の仕事であれば言ってくれればやりますよ。但し、今予定が詰まっているから着手するのに3週間は見て貰わないと…」という具合だ。スケジュールを見ると、特段多くの予定を抱えて切羽詰まっている様子はない。また、バックグラウンドを考えると、AとBの経験をもって十分こなせそうな内容である。なぜこのような反応になるのだろうか。
原因は、1つにはエンジニアという職種の特殊性にあると思われる。エンジニアは、納期や品質といった様々な条件下でアウトプットを出すことを求められる。突然仕様が変更されたり、予期せぬトラブルが起こるなどは日常茶飯事だ。残業や休日返上をしてでも仕事を完遂しなければならないような厳しい環境を経験する人も多いだろう。そうした時、「言われたことはやった」という実績こそが、自己正当性の証となる。だから「やるべきことは何か」が事前に細かく定義されていなければ、乗り気にならない。プロジェクト全体の責任はプロジェクト・マネージャーがとるし、受注活動は営業の仕事とし、防御線を張って自己保身することを優先するのである。
しかし、依頼に対してネガティブな対応を続けていると、新しい業務や技術に触れて自己成長する機会をみすみす失うことにつながる。変化の激しいIT業界において、自己研鑽なしに現状維持することは難しい。放っておくとスキルや能力はやがて時代遅れなものになってしまうだろう。そして、何よりも問題なのは、自分に仕事が回って来なくなることだ。難色を示すなら、その人に仕事を頼むのは止そうということになる。システム開発やオペレーションだけでなく、営業訪問や企画提案の仕事をしてみると、その事がよく分かるはずだ。
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