「米国は訴訟社会だ」という話をよく聞く。日本より訴訟件数の多い地域に進出する日本企業は、消費者や現地従業員、競合企業などとの訴訟を想定しておかなければならない。では、日本企業がこうした訴訟社会に足を踏み入れるとき、何に注意すればいいのか。ここでは、IT部門が訴訟に備えて果たすべき役割と、準備すべき対策を考える。
訴訟対策を体系立てて整理せよ
「eディスカバリー」とは、米国の民事訴訟における証拠開示手続きのうち、電子データを対象としたものをいう。米国の民事訴訟では、原告と被告の双方が、訴訟事案に関連する文書や資料を互いに開示する義務がある。昨今の企業活動は、大半が電子的な処理で成り立っているため、証拠として開示すべき情報も、紙の書類だけではなく、メールや設計図面などの電子データが含まれるべきだと考えられる。
企業は、保有する膨大な電子データの中からいかに効率的に証拠となる情報を探し出すか、企業活動で生成される電子データのうちどんな情報を保管すべきか、データをどのような記憶媒体(ディスクやテープなど)に保管するのが適切か、どんな技術を使えばデータの可用性や完全性を高められるかなどを考慮しなければならない。
訴訟においてeディスカバリーが始まると、通常はEDRM(The Electronic Discovery Reference Model:電子情報開示参考モデル)と呼ぶ作業プロセス(図3)に従って実務が遂行される。これにより、開示する情報を徐々に絞り込み、効率的に証拠を開示できるようになる。膨大なデータの中から、証拠として適切な情報を抽出してレポートにまとめるといった作業は効率性が求められる。やみくもに証拠となりそうな情報に目星をつけるのではなく、対象範囲を明確に定めて、EDRMの手順に従って証拠開示手続きを進めるのが好ましい。
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