自らダイエットにトライしてみると、気がつくことがたくさんある。10%の減量に成功した暁には体調もすこぶる良くなった。この体験に照らして情報システムのあり方に思いを巡らせてみると、その肥大化の理由なり、対処の心得なりが見えてくる。今回はそんな話をテーマにしてみる。
筆者がカロリー総量と炭水化物などの摂取を制限する、いわゆる糖質ダイエットを始めて4カ月が過ぎた。きっかけは、ある取材記事の写真だった。腹回りの脂肪が気になりつつも日常のことなのであまり気にも留めていなかった。しかし送られてきた取材記事の写真はどう見ても顔はむくみ、お腹はぽっちゃり型だ。夜の会食が多い日常生活の中で、このまま放置したら健康を損ねるだろうという心配もあった。
4カ月の検証で体重を10%減
生活習慣の改善には断食が効果的だが、会食の機会が多い日々での実践は難しい。1日の摂取カロリーを基礎代謝+200カロリー程度に制限することと糖質ダイエットに取り組むことにした。やってみてわかったことがいろいろある。
まず食物のカロリーに敏感になる。内臓脂肪は減りやすいが皮下脂肪は容易に減らない。2カ月後くらいから体の動きが楽になる。減量が進むと運動意欲が増す。やや高めだった血圧が平常の値に戻る。熟睡できるようになる。食べても満腹になることがない…。
改めて世の中を見ると、食料の少なかった時代と異なり現代の日本では明らかにカロリーも糖質も過剰な摂取になっていると思う。糖質は脳に空腹感や摂取後の充足感を与える作用がある。日常摂取しているものを制限することは、きっぱり止めてしまう禁煙よりもはるかに困難だ。ダイエットに失敗し、リバウンドする事例もよく理解できる。4カ月の検証の結果は、理想体重(10%減)になるとともに血液検査数値がことごとく改善した。
肥満体質の情報システム
同じような現象が、情報システムにも起きているのではないだろうか?
シンプルで保守しやすい情報システムを目指しながらも、いろいろな要件を取り込んでいるうちにシステムは肥大化しがちである。個別のシステムでもデザインが不備だと不要な機能も取り込みやすい。コントロールが利かないまま、ユーザーニーズをどんどん取り込めば肥満になるのは当たり前だ。
いわゆる“スパゲッティ化”と呼ばれる状態は2つの面で起きる。1つは単体の情報システムで機能追加を繰り返すあまり、極めて複雑なプログラムとなってしまい、プログラムそのものが難解で煩雑なスパゲッティ状態になることである。もう1つは情報システム間の連携が必要になり、プログラムで密結合を繰り返し、システム全体がスパゲッティ状態に陥ることである。企業情報システムとして包括的なデザインがなく、サイロ化した情報システムを乱立させることは、システム全体を肥満にする。
こうなると使い勝手は悪く、血流悪化のような状態になってしまう。プログラムのスパゲッティ化は糖質そのものであり、肥満化を促進していく。無駄な保守を迫られることも多くなる。無策のままで自然にスリム化することがないのは、人体と同じだ。よほど意識しないと情報システムの肥満は止まらない。
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