外国人や高齢者、はたまた異端な人などの働く環境を整え、そうした多様な人がもたらす創造性や柔軟性を企業活動に生かしてこそ、ダイバーシティ企業と言える。言葉こそ流行れど、なかなか実態は伴っていない。多様性を模索する企業に必要なのは風土という体質の改善である。
「ダイバーシティ」という言葉をよく耳にするようになった。2014年9月3日に発足した第二次安倍改造内閣でも、女性閣僚を18名中5名(3割弱)指名するなど注目を浴びた(その後、残念なことが色々あったが)。情報産業も同じ、いや、むしろ横文字好きの情報産業の方がよく使っている言葉かもしれない。
背景には人材不足があると言われる。日本が向かう急速な少子高齢化社会での労働力不足は、確実に深刻な社会問題になるだろう。しかし、ダイバーシティに関わる議論の中身に注目してみると、単に女性が働きやすい環境を開発する話が多い。言葉は時代と共に変遷していくので、ダイバーシティという言葉も適用が広がっているように思うのだが、労務問題へ偏っていることに違和感を覚える。
英和辞書を紐解くと、ダイバーシティ(Diversity)とは、「相違」「差異」「多様性」とある。もともとは米国における少数民族や女性に対する差別を排除する活動に端を発するようだ。ダイバーシティに取り組んだ企業が多様性を求める顧客ニーズにマッチし、業績に好影響を与えたことから経営革新手法としてダイバーシティ・マネジメントが注目されてきた経緯がある。
このことから明らかなのは、外国人や高齢者、チャレンジドや異端な人などの働く環境を整え、そうした多様な人がもたらす創造性や柔軟性を企業活動に生かしてこそ、ダイバーシティ企業と言えることだ。女性の登用は間違いなくその一部だが、それだけが突出しているのは困ったものだ。働き方の多様性に目が向けられる中で、多様な労働形態と称して低賃金労働の若いワーキングプアを排出している現実もある。多様性を勘違いしてはならない。
性差による「差別」と「区別」
もっとも、女性の働きやすい環境や登用を推進するのは大事だ。雇用の実態を示す数字として男性21.9%、女性は57.7%(2014年労働力調査による)がある。何かというと非正規雇用率であり、女性の管理職登用や役員登用が進まないことも頷ける。日本政府がポジティブ・アクションの推進として掲げる「2020年30%」は2020年までに女性の管理職を30%に引き上げようと言う目標であるが、到底達成できるような現状ではない。この状況を変えることがダイバーシティの入り口だろう。
このとき男性と女性は生物学的に異なるわけだから、その特性を「区別」して活用されなければならない。いかに何に差異や相違を重んじることができるかである。女性には出産という役割があるが、そういう肉体的な問題だけではない。女性の特性や感性は男性とは異なる。特に情報や物流やマーケティングの分野では女性の感性は欠かせない。就業者の42.8%(2013年)が女性である。この違いを尊び活かしていくことが、女性を対象にしたダイバーシティなのではないのか。「差別」は許されぬが「区別」して初めて差異は活かされる。
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