[ザ・プロジェクト]

老舗文具店、銀座・伊東屋が仕掛ける「新しい買い物体験」とは何か?

2015年9月7日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

顧客が好きなときに好きな方法で、商品情報を得たり買い物をしたりできるうえ、決済や配送方法も自由に選択できる──。ネット上のオンラインショッピングではごく普通のことだが、実店舗にこれを応用すればどうか?老舗文具店の銀座・伊東屋が挑んでいる。

 「実店舗とeコマースは対立関係と言われるが、そうではありません。実店舗におけるIT活用が遅れているのが問題です。それを加速し、実店舗における新しい買い物体験をITで実現したいと考えています」──。

 日本人の多くが知る老舗の文具店、銀座・伊東屋の松井幹雄 執行役員企画開発本部長は、同社が今、挑んでいるITを活用した実店舗のイノベーションについて、こう語る。ビジネスシステムイニシアティブ協会が2015年8月27日に開催したカンファレンスで明らかにした。

写真1:立地条件は東京・銀座で申し分ない。ただし縦長であり、来店客に各フロアをどう回遊してもらうかが課題。カフェなどを上層階に設けたのは、その一環写真1:立地条件は東京・銀座で申し分ない。ただし縦長であり、来店客に各フロアをどう回遊してもらうかが課題。カフェなどを上層階に設けたのは、その一環
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 松井氏は、目指す店舗のビジョンとして(1)想像を超えた発見がある、(2)気持ちを切り替えられる、(3)すべてが自然に流れ心地よいひとときを過ごせる、の3つを掲げる。「2015年6月にリニューアルしたばかりの新本店『G.Itoya』は縦長の12階建て(写真1)。物販が8フロアが占め、ほかにカフェ、野菜工場、ラウンジ、多目的ホールが各1フロアあります。この店に新たな仕組みを導入します」。

 上記3点を実現する前提が、実店舗の良さと不便さの分析である。松井氏によると、次のようになる。

実店舗の良さ

1)現物の商品を見て試せる。例えばペンの太さ、重心などの感触を確かめられる
2)使用状況を考えた展示・提案がある。偶然の出会い、発見がある。例えばペンを買う際に、その周囲に置くノートやファイルなどを知ることができる
3)店員への質問、相談ができる。例えば自分のためではなく、親戚や知人などに贈るギフトのアドバイスを得られる
4)環境が楽しい。楽しい仕掛けがある。例えばイベントスペースなどがある

実店舗の不便さ

1)店に足を運ばないと買い物ができない。開店時間も限られている
2)商品情報や在庫がすぐに分からない。例えばすべての色のペンが展示されているとは限らない
3)レジ(精算)の無駄な待ち時間がある
4)過去に買った買い物履歴が分からない
5)買ったものが荷物になる。行きたい場所があるのに持ち運ぶ必要がある

 重要なポイントは、このうちの良いところを伸ばし、不便なところを解消すること。良いところを伸ばすのは、主に内装やレイアウト商品陳列など店舗の工夫による。例えば、物販は8つのフロア毎に「Desk」や「Travel」「Meeting」といったテーマ展示にしたり、内装や展示物の色や種類に一貫性を持たせたりといったことだ。

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