IT業界ではITプロジェクトで成功するのは2~3割、7割は失敗プロジェクトだという評価が定説のようになっている。一方で「情報システムは経営の根幹を担い、事業は情報システムで支えられている」とも言う。後者は日々実感できるはずで、7割もの失敗があったら経営は立ちいかないはずだ。筆者の実戦経験からすれば、「少なくとも7割は成功する」のが正しいのではないか。
日本のITに存在する、特殊な自虐性
一体、「7割が失敗」の根拠は何か? 企業アンケート調査などで、ITプロジェクトで何らかの問題が発生したかについて聴取した結果から導いているようだ。問題には、プロジェクトの遅延やコスト超過、稼働後に起こったシステム障害に加えて、人間関係なども含まれているようで、そのような問題がなく稼働できたのが2~3割だと言いたいらしい。
実際の現場では、開発した情報システムが業務で利用開始される予定期日(カットオーバーとかサービスインとも言われる)がずれ込むこともあるし、開発途中で機能追加やプロセス修正が出て追加開発が行われた結果として、当初予算を超過することもある。テストを重ねても、人間がプログラムを書いている限りプログラムミス=バグを完全になくすことは至難だ。
そのバグによって稼働後にシステム障害が起きることもある。それを見込んでシステム開発の契約では瑕疵担保条項を設け、多くは瑕疵担保の期間を稼働後12カ月としている。つまり12カ月以内に瑕疵による障害が起こることを想定しての契約であり、それらをも失敗にカウントすべきなのか、大いに疑わしい。
IT業界にはITプロジェクトは失敗するとか、企業のシステム部門は存在意義がないとか、情報サービス企業は駆逐されるとかネガティブイメージを揶揄嘲弄するのが好きな風土がある。それに対して大いなる反論もせず、自嘲気味に受け入れている風もある。これは日本のIT部門やIT業界の特殊な自虐性のように思えてならない。
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