本連載で取り上げている「ワンデータ・トランザクション」が示すのは、これからのサプライチェーンが目指すべき方向性である。だが、より完成度が高いサプライチェーンを築き上げようとすると、必ずどこかにしわ寄せが生じることになる。それは、ほとんどのケースにおいて、ロジスティクス領域で起きる。今回は、ロジスティクスにおけるワンデータ・トランザクションの影響を考えてみる
これまで本連載では、「ワンデータ・トランザクション」が実現するSCM(Supply Chain Management)の未来について言及してきた。今一度、ワンデータ・トランザクションについておさらいしておくと、そのポイントとしては以下が挙げられる。
●ワンデータ・トランザクションは、サプライチェーン上にある各企業が持つ需要・供給情報を一元的に管理し共有する考えである。企業間で情報の質・鮮度の差異をなくすことで、情報連携にかかる時間を基本的にゼロにする
●ワンデータ・トランザクションの考え方は、既存サプライチェーンの構造を大きく変える可能性を秘めている。情報連携のタイムロスがないため、生産側は見込み生産を極力減らせ、デカップリングポイント(見込み生産と受注生産の分岐点)はより上流に移動する。ロジスティクス(物流)では、流通上のDC(Distribution Center:在庫型物流センター)が不要になりTC(Transfer Center:通過型物流センター)に変わっていく
このようにワンデータ・トランザクションによってサプライチェーンを強化するためには、ロジスティクスの強化設計を併せて実施することが必要不可欠である。いくら素晴らしい需給計画を立てたところで、無理に無理を重ねたロジスティクスにしがみついているような状態では、そのサプライチェーンには、いつか必ずヒビが入る。では、ワンデータ・トランザクションが実現するSCMにおいて、ロジスティクス領域は、どの様な変化を求められるのだろうか。
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