[事例ニュース]
味の素冷凍食品、EPMを導入して経営管理基盤を刷新、年次予算策定業務を年120時間削減
2025年9月11日(木)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)
味の素冷凍食品(本社:東京都中央区)は、経営管理システムを刷新して、課題だった予算策定と実績管理の仕組みを改善した。EPMプラットフォーム「CCH Tagetik」(開発元:オランダWolters Kluwer)を導入して年次予算策定を移行。損益レポートの作成を即日化して年間120時間を削減し、予算策定の準備・集計作業にかかる時間を88%削減している。CCH Tagetikの提供元で、導入を支援したTISが2025年9月10日に発表した。
味の素グループの味の素冷凍食品は、1970年に創業し、日本初の高品質冷凍食品を開発した冷食のパイオニア的存在である。発売から半世紀を超え、年間1億パック以上を販売する「AJINOMOTO BRAND ギョーザ」など、多くの人気商品を展開している。
同社は会計業務において、「次年度の予算策定作業の負荷増大」と「月次実績を入力・管理するシステムの老朽化」という2つの課題に直面していた。
毎年9月から約3カ月を要していた次年度の予算策定作業では、各事業部が分担してExcelシートに個々の商品の販売目標数量を入力した後、生産部門がExcelシートに原価計算結果を入力。さらに固定費や物流費を反映して利益目標を定めるという流れで、Excelファイルを完成させるまでに多大な手間がかかっていたという。
また、月次実績管理システムが構築から約20年経過して老朽化。このシステムは会計・販売管理のデータを抽出して月販売数量や利益率を集計し、営業・開発・工場に公開する役割を担っていたが、予実管理機能が未実装で、それを望む声が挙がっていたという。しかし、長年改修を重ねてきたため機能拡張は困難で、刷新が急務になっていた。
予算策定と実績管理という2つの課題を同時に解決するため、同社は新たな経営管理システムの導入に着手。製品選定において、当初はBIツールを試験導入したが、業務ロジックを踏まえたデータ加工の要件を満たせなかったという。
そこで、多角的な業務評価を可能にするEPM(Enterprise Performance Management:企業経営管理/企業業績管理)に着目。検討の末、オランダWolters Kluwer(ウォルターズ・クルワー)が開発し、TISが国内提供している「CCH Tagetik」(開発元:オランダWolters Kluwer)を選定した。
CCH Tagetikは、企業の経営管理を司る財務・会計・経理・経営企画の各部と、各事業部のリーダーの迅速な意思決定を支援するEPMプラットフォーム。予算管理、連結管理、開示・報告を含む広範な経営管理業務において、データ収集・加工から可視化・分析・レポートまでの統合管理機能を備えている(図1)。

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2023年1月、CCH Tagetikの導入プロジェクトを味の素冷凍食品と同社の情報システムを長年支えるNRIシステムテクノ、TISの3社体制でスタート。構築作業を経て、2024年4月より新経営管理システムが稼働。同年11月の予算策定業務から利用を開始した。
導入効果として、予算の策定に関わるExcelの作業時間を年間で約120時間削減した。損益レポートの即日作成完了が可能になり、予算作成時のバージョン管理の煩雑さ、入力ミス・誤削除の不安を解消したという。予算策定事前準備・集計作業における業務時間は88%削減している。
ほかにも「商品別、事業部門別といった切り口で売上や利益率の進捗を確認できるようになり、営業、開発、工場といった各自が所属する領域で、データに基づいた行動や意思決定が活発になったという。
味の素冷凍食品は、CCH TagetikによるEPMの活用を深めていく方針で、「近い将来、財務会計と管理会計の完全な一致やバランスシート(B/S)データを取り込んで親会社へのレポーティングパッケージ作成を自動化することも視野に入れている」としている。