モノと情報を一体化し、全プレーヤーが同時に動く【第1回】
2015年10月13日(火)浅川 智哉(シグマクシス デジタルフォース グループ マネージャー)
SCM(Supply Chain Management:サプライチェーンマネジメント)を支えるシステムはこれまで、モノを「作る、運ぶ、保管する、売る」といったプロセスにそって、それぞれが必要とする情報を管理してきた。しかし、インターネットやクラウドコンピューティングが急速に普及してきた今、これらの情報は高度に、かつ能動的に利用できる形で管理されなければならない。そのための仕組みを筆者らは、「ワンデータ・トランザクション」と呼んでいる。第1回は、このワンデータ・トランザクションの定義と、それがSCMに与えるインパクトの全体像を紹介する。
サプライチェーン上には数多くのプレーヤーが存在している。原材料を提供するサプライヤーから、原材料から製品を生み出すメーカー、製品を入荷して小売りに提供する卸売り、そして消費者に手渡す小売業などだ。これらすべてのプレーヤーを経て、モノの価値が提供されている。この価値の提供プロセスにおける需要と供給をプレーヤー間で連鎖させ、最適化を図る活動が、SCM(Supply Chain Management:サプライチェーンマネジメント)である。
過去10年、新たな動きがなかったSCM
各種アプリケーションやERP(Enterprise Resource Planning)の普及により、サプライチェーン上の各プレーヤーは、こぞって最適化、つまりはモノを中心としたSCMプロセスの構築に取り組んできた。しかし、そのためのシステム導入が一巡してから10年ほどが経った現在、次の一手がいまだ見えてこない。
営業やマーケティング、経営管理の世界では、続々と登場する新たなテクノロジーを活用して、日々新たな取り組みが起きている。これに対し、サプライチェーンの世界では大きな動きが起きていない。その理由は、原価の低減や、品質の向上と担保、リードタイムの短縮といったモノの動きの改革・改善の域から脱却できていないからではないだろうか。
一方、サプライチェーンを情報の視点で見てみると、POS(Point of Sales)データの活用や業界EDI(Electronic Data Exchange)、VAN(Value Added Network)などの取り組みは進んでおり、ベンダー主導の在庫管理であるVMI(Vendor Managed inventory)では相当量の商品がやり取りされている。この現実を考慮すれば、SCMは進化しているともいえる。しかし、これらの取り組みも、現行業務の純粋なシステム化や単一企業内での個別最適化に止まっているのが実状だろう。
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