2016年、最もホットなITキーワードの1つである「Internet of Things:モノのインターネット」。しかし工場や設備系のITは生産部門や施設管理部門が管轄するケースが多い。製品自体のIoT化や、モバイルデバイスによる人のIoT化になるとなおさらで、情報システム部門やCIOは管轄外となりがちだ。当然、それでいいわけではないし、それで済むわけでもない。
とはいえ率直に言えば、富士通がこの種のIoT端末を販売するよりも、市販されているウェアラブルデバイスを利用してソリューションを提供する方が現実感はあるし、トータルで安価になるように思える。にもかかわらず市販するのは、コアモジュールのような製品が、ほとんど存在しないのと、用途を想起させる端末群によってIoT需要を掘り起こし獲得したいとの考えがあるようだ。
ユビキタスウェアのもう1つの構成要素であり、より重要と考えられるのは、センサーが送出するデータを加工・分析する「センサーアルゴリズム」というソフトウェアである。例えば、人が歩いているのか転倒したのかを加速度のデータから判断する機能や、音が普通の会話なのか生活音なのかを判別する機能など、60種類以上のアルゴリズム(機能)を持つ(図3)。
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IoTに取り組もうとする企業が、まず突き当たる壁がこのアルゴリズムである。ゼロから開発することを考えると、IoTに取り組みやすくなることは間違いないだろう。センサーアルゴリズムは、富士通のクラウドサービス「MetaArc」で稼働し、サービスとして提供される。
加えて今回から「パイロットパック」も用意した。必要な端末やユビキタスウェア、クラウド環境、コンサルティングサービスなどを2カ月間、レンタルで提供する。費用は100万円程度から。試用のためなので、もう少し安くてもいいのではと思えるが、本格的な構築に着手する前に試す手段が登場したのは朗報だろう。
安川情報システム:機器制御を主軸にワンストップサービス化
一方、10年近く前の2006年から機器の遠隔監視や制御に取り組んできたのが安川情報システム(YSK)である。産業用ロボットメーカー、安川電機のグループ会社だ。グループ会社と言っても親会社向けの売上比率は15%しかなく、医療や自治体向け、組み込み機器向けで稼いでいる。
YSKが志向するIoTは、機械や機器の監視用途だ。一般に世の中では、多くの機器・設備が動いている。工場にある機械や、保冷車、家庭や事業所にある蓄電システム、ビルのエレベータなどなど。しかし、ネットワーク化され集中監視されているのは、大規模な工場や高層ビルの最新エレベータなどごく一部。YSKが対象にするのは、そうした既にネットワーク化されている機器や設備以外である。
例えば、中小規模の工場や小規模ビルのエレベータや電気設備などは、故障すればメーカーや保守業者に連絡し修理を受ける。しかし場合によっては、現地に行かないと故障原因が分からなかったり、原因次第では部品を取りに戻る必要があったりする。それだとコストも時間もかかってしまう。メーカーや保守会社が機器の状況を遠隔で知ることができれば、無駄を減らし顧客満足を高められるはずだ。
そこでYSKは、機械の制御装置である−プログラマブルな表示器やロジックコントローラーなどをネットワークに接続し、遠隔監視する仕組みを作り上げた(図4)。中心になるのは「MMLink」という3G回線につなげる通信機器と、通信回線サービス、取得したデータを見たい形式で見られるようにするSaaS(Software as a Service)である「MMCloud」の3つである。
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