[木内里美の是正勧告]

FinTechに揺れる銀行とアナログな現実

2016年5月16日(月)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

銀行をはじめとする金融機関の間では、FinanceとTechnologyを掛け合わせたFinTechの話題が盛んだ。昨今のこの領域では、ITベンチャーの存在感が高まっている一方で、既存の大手はむしろ守り側としての振るまいが目立つ。筆者は、そんな構図を象徴するような出来事をつい最近味わった。

 筆者の会社にも取引銀行の口座があり、法人カードが発行されている。先日取引先へ振り込みをするために銀行に出かけた時のこと。ATMにカードを差し込み、暗証番号を入力すると「このカードでは取引ができません」という案内とともにカードが戻されてしまった。行員に口座とカードを調べてもらうと「カードのICチップが壊れているようです」という。問題はここから始まった。

 まずカードの再発行に1週間以上かかるという。しかもいつ発行できるか確約できないと言い、すでに1週間を過ぎるがまだカードは届かない。カード内部のデータは保存管理されているはずだし、2営業日くらいで再発行されると思ったのは甘かった。

 ともかく給与の振り込みや支払いは行わねばならない。カードが無いから通帳と印鑑を持参して、銀行の窓口に行かねばならないのだ。窓口業務はいつも停滞していて、到着順に受付機で番号札をもらい、順番を待つ。その間に引出し1件でも書類に記入し、遅々として進まない窓口処理を待つことになる。実に無駄な時間を顧客に強いるものだ。

 振り込みはさらに大変である。「振込依頼書」と言う書類に必要事項を記入するのだが、頻繁に振り込む相手先はカードに登録しているから、個々の相手先の銀行や支店や口座番号などを覚えていない。請求書で確認しながら記入しなければならない。それだけではない。窓口振込になると振込手数料がグループ行宛でも108円から540円に上がり、他行宛は432円から864円になることに驚く。こちらが手数料を貰いたいくらいなのに、この不合理を何のためらいもなく説明するのだ。

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