[ザ・プロジェクト]

世間はJALをどう見ているのか?─SNS中心に「反響」を定量分析しサービス向上につなげる

2017年7月18日(火)川上 潤司(IT Leaders編集部)

自社の商品やサービスを市場に訴求し愛用者になってもらう─。そうした働きかけをする上で今や欠かせないのがネット上のプロモーションだ。日本航空(JAL)は、SNSの公式アカウントによる情報発信や、SNS上でつぶやかれている同社の評価といったものから各種施策の「反響」を定量的に把握し、サービスの改善に役立てる取り組みを始めた。複数のデータソースをクラウド型のBIツールに集約し、独自のスコアを算出する仕組みがそれを支えている。同社のコーポレートブランド推進部でWebコミュニケーショングループ長を務める山名敏雄氏に詳しい話を伺った。(聞き手は川上潤司=IT Leaders編集長)

─まずは、山名さんのお仕事内容を教えていただけますか。 

 ブランディング戦略の一環として、主にはSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の公式アカウントの運用をしています。例えば、FacebookやTwitter、Instagram…そうした媒体のJAL公式アカウントで情報発信をしているのが私たちのチームです。 

 情報発信するだけではなく、広くお客様の声に耳を傾けるという意味で、ネット上に上がっている当社に関わる意見や感想といったものを収集し、商品・サービスの改善に役立てる取り組みもしています。つまり、お客様、あるいは市場との接点としてとても重要な役割を担うネットの世界で、発信と受信、双方向の窓口を担っていることになります。 

日本航空 コミュニケーション本部 コーポレートブランド推進部 Webコミュニケーショングループ長 山名敏雄氏

顧客との絆づくりに欠かせないネット上のプロモーション

  JALグループの企業理念は「お客さまに最高のサービスを提供」することです。そのためにお客様との絆つくりはとても大切なことです。事業に関わる全員が行動や判断の拠り所とする「JALフィロソフィ」に基づき、一人ひとりが最大限の努力をしていかなければなりません。 

 JALが今、何をしようとしているのか、そこにはどのような想いを込めているのか、といったことを公式アカウントでお伝えする。一方では、どのように受け止められているかを把握し改善すべき点があればはきちんと対応していく。お客さまとの絆を深めていく活動は、当社の経営方針とも密接に関わっているのです。

-Facebookでは、社員の方の写真や名前が入った情報発信が前々から注目されていますね。

 “実名顔出し”は一つのポリシーで、Facebookページを2011年春に開設した当初から続いています。社長の植木もよく言っていることですが、企業ブランドを築くという時に、欠かせないのが「人の顔が見えているか」ということです。

 ただ単に会社を紹介する美辞麗句を並べても意味がない。専任チームだけで計画的にコンテンツを揃えても、どこか一本調子になってしまう懸念があります。どのような想いで仕事に臨んでいるのか、安全を支える舞台裏とはどんなものか。実務の現場にいる一人ひとりの立場で情報発信した方が、多少の粗さがあったとしてもリアリティがあります。

 Facebook以外にも様々なSNSがありますが、目的やそれぞれの特性を考えて組み合わせたり使い分けたりしています。

─さて、本題に入るとしましょう。今回は、BIツールを導入したとのことで取材に伺ったのですが、どのような使い方をしているのでしょうか。

 情報発信するからには、どれだけ反響があったかを知りたいわけです。分かりやすい所で言えば、Facebookだったら「いいね!」やコメントの数、Twitterだったらリツイート数、YouTubeだったら再生回数といったものです。管理者権限ではさらに多様な指標を見ることができ、もちろん、これまでもメディア別には日々チェックしていました。

 ところがメディア横断的に見たいとなると一気に敷居が上がってしまうのです。国内線で機内Wi-Fiサービス無料キャンペーンを展開する、著名アーティストを起用した新CMを放映する…。ビジネスで何らかの施策を展開する際、複数のメディアを駆使して告知することになります。それら全体を通しての反響を測る“共通のモノサシ”が欲しいのですが、結局の所、メディア個別に紐付いたツールから手に入るデータを表計算ソフトに再入力して集計する、といった手間がかかっていました。

 メディア個別のパフォーマンスを集約して私たちなりの評価軸を作りたい、分析に関わるツールがバラバラの状態に“皮”を被せて一元化したい──。チーム内では前々からそうした課題を挙げていて、その解決のためにBIツールを導入することにしたのです。

メディア横断的に反響を把握するのが難しかった

─BIツールは具体的に何を採用したのでしょう?

 米Domo社の「Domo」というツールです。クラウド型で提供されているので、サービスといった方が正確かもしれません。

 正式に契約して使い始めたのは今年(2017年)の4月1日からです。ただ、4月と5月は開発期間という位置付けで、その間、当方で用件定義をまとめて、Domoさんの日本法人の方にデータセットの作成など開発的なことやってもらっていました。Domoではデータの分析結果をグラフなどの形式で表示する機能を「カード」と呼びますが、私もそのカードを並行して作ったりしまして…。そうして5月末ぐらいに主要機能が一通り仕上がりました。目下、“試運転”しながら、数値が本当に正しいかどうかを既存ツールと照合したりしながら最終チューニングを図っています。

-失礼ながら、日本ではまださほど知られていないツールのような気もします。

 とあるセミナーに参加して初めて存在を知りました。そこで、私たちのニーズにはピッタリではないかと直感しまして、その場に来ていた営業の方と名刺交換したのが、そもそものきっかけです。

 少しだけ私の経歴をお話しさせて頂くと、新卒で入社して最初に配属されたのはIT部門でした。いろいろと経験を積んで、とある開発案件のプロジェクトマネジャなども担いました。その後、2000年代にECサイトの立ち上げに携わり、Webマスターをすることになりまして。この時には、いわゆるマー ケティングサイドの立場で勉強させていただきました。

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