マシンラーニング(Machine Learning:機械学習)がさまざまなプログラミング領域へと適用され始めているが、属人的な“場当たり的”アプローチのままで良いのか−−。そんな問題意識の下、ソフトウェア工学の専門家によるパネルディスカッションが開かれた。多くの企業において、これから開発するソフトウェアが、顧客に向けたサービスを実現するためにシフトする中で機械学習への期待も高まっているはず。だが、その活用がソフトウェア工学的にどうとらえられているのかは知っておくべきだろう。
パネルディスカッションを開いたのは、情報処理学会のソフトウェア工学研究会。「ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES)2017」の一プログラムとして、2017年8月31日に東京・早稲田の早稲田大学グリーンコンピューティングシステム研究開発センターで開催した。学生を含め若手の研究者・実務者の姿が目立つパネルディスカッションになった(写真1)。
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冒頭、司会を務める南山大学情報理工学部ソフトウェア工学科教授の青山 幹雄 氏が、機械学習の利用場面が広がることでの新たな課題を提示した(写真2)。
課題の1つは、解決すべき課題のオープン化。従来のシステムが、企業内あるいはハードウェア内に“閉じた”ものだったのに対し、対顧客サービスを提供するモバイルやWebシステムなどは「境界があいまいな“開いた”システムであり、要件定義からして複雑さを増していく」(青山氏)。
もう1つの課題が、パネルのテーマでもある機械学習の適用である。アルゴリズムに基づいて解が導かれるのに対し、機械学習によるアプローチでは解が導かれる過程がブラックボックスになってしまう。しかし現実には「既に、クルマの自動運転システムなど、開いたシステムを機械学習で構築する動きが始まっており、一部はさらに実用化段階にある」(青山氏)。2つの課題を同時に見極め対峙しなければならないというわけだ。
機械学習の利用が進むゲーム開発、DeNAはデータ設計を重視
続いて、機械学習によるシステム開発の現状を共有するために、DeNAのシステム本部AIシステム部アナリティクスアーキテクトの濱田 晃一 氏が、DeNAでの機械学習の利用状況を説明した。DeNAでは2010年から既に、機械学習の利用を始め、種々の実サービスに適用している。
例えば、マンガ配信の「マンガボックス」では画風が似ている作品のレコメンドに、キャラクターとチャットする「mobageチャット」では方言や話者の“熱さ”を加味した対話の実現に、それぞれ利用している。各種ゲーム開発では、ゲームを攻略するAI(人工知能)が開発中のゲームをプレーし難易度を評価することで「ゲームが難しくなりすぎないように修正している」(濱田氏)という。
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