[中国電脳事情]

【中国電脳事情セレクション】産業用ロボットのオペレーターが3年後に300万人不足する―中国政府予測、ほか

2017年11月7日(火)足立 治男

中国メディア各社の報道から、IT関連の最新動向を紹介する「中国電脳事情」。1カ月間に報じられた主要なニュースから重要なものをピックアップしてお伝えする。

産業用ロボットのオペレーターが3年後に300万人不足する―中国政府予測

―新華社(2017年9月21日)

 中国で産業用ロボットの導入が加速している。だが、その普及に伴ってロボットを操作するオペレーターが著しく不足するという事態が起こっている。

 中国電子学会が近日発表した『2017中国ロボット産業発展報告』によると、中国は連続して5年間、世界最大の産業用ロボット応用市場となっている。その一方で、多くの製造業が産業用ロボットのオペレーター人材確保において窮地に陥っているというのだ。

 新華社の取材によれば、広東省、福建省、山東省におけるリクルート会場で、産業用ロボットの維持整備、オペレーター、プログラミングなどの大量の求人で、月額4000元~30000元(約6万9000円~約51万9000円)もの高給を打ち出しているものの、掲げられた「急募」の文字もむなしく、採用ゼロの企業も少なくないようだ。

 中国教育省(日本の文科省に相当)、人力資源・社会保障省(日本の人事院と旧労働省に相当)、工業・情報化省が共同で公布した「製造業人材発展計画指南」では、中国高度デジタル工作機械と産業用ロボット分野における人材の不足数は2020年には300万人、2025年には450万人に達すると予測している。

 「あるオペレーターは出勤初日に1個40万元もする刃を折ってしまった。労働者の技術レベルが機械や企業の要求に達していないので、企業の成長への深刻な阻害要因となっている」――これは広東省東莞市で金型を生産する東莞市恩盛機械模具科技の社長の声だ。氏は「ここ10年間、技術の進歩に困惑したことはないが、今はとにかく人材が集まらない」と嘆いた。

 福建省晋江市で紡織業を営む晋江龍峰紡織は、2011年から設備の自動化を推進。今回新たに導入した2000台以上の設備はすべて自動化、スマート化されている。同社副社長の衛巍氏は「インタフェースにはすべてPCがあり、操作指示はすべて英語なので、オペレーターは少なくとも若干の紡織に関する英単語の知識と、ある程度のプログラミングの知識が必要だ。そのうえ、場合によっては若干の日本語の知識も必要となる」とした。衛氏も「このような労働者の採用は極めて困難になった」とため息をついた。

 このほか、広東省、福建省、山東省などの人材資源行政を司る部門の担当者は、新華社の記者に対して、「現在、Industrie 4.0の成長ニーズに適応した技能人材は明らかに構造的な不足に見舞われている」とコメントした。

 「人からロボットに切り替わるということ。これは、簡単に人を機械に替えるというのではなく、人をさらに高度な技能人材に振り返るということだ」。こう語るのは、工業・情報化省の国際経済技術協力センター Industrie 4.0研究所の所長である王喜文氏はこう語る。氏は「高度技能人材の不足はすでに中国製造業の転換昇級における障害となっている」との認識を示した。

産業用IoTの発展が促す経済成長モデル転換――「2017年産業用IoT白書」より

―中国工控網(2017年9月26日)

 江蘇省無錫市の重要な工業地帯である恵山区。同区で開催された「2017スマート製造・産業用IoTサミットフォーラム」の席上、工業・情報化省傘下の中国電子標準化研究院が他の関連研究機関と共同で「2017年産業用IoT白書」を発表し、業界全般の注目を集めている。

 同白書では、産業用IoT(IIoT:Industrial IoT)の成長発展の意義は「スマート製造」を補助することにあり、世界の産業・工業体系のスマート化を推進し、設計、生産、管理、サービスといった人の生活に関わるあらゆる分野・部分で応用できるものと説明。「莫大な経済的価値を含む、中国の新興産業戦略の重要な構成要素である」(同白書)と記されている。

 また、同白書は、産業用IoTには依然として“権威的な定義”が存在しないことと、単純に「産業+IoT」でもないということを示しているとした。

 同白書は、産業用IoTの普及による伝統的産業の変革、経済的な付加価値向上から、中国の経済成長モデルを「生産で経済成長を牽引」から、「イノベーションで経済成長を牽引」へと転換させるものとしている。

 ある業界関係者によると、中国の産業用IoTはここ最近、政府主導から需要主導へとシフトしてきており、多くの企業が単純に自社のソリューションとしてIoTを利用するという流れができているという。

 製造業界は今、生産効率の向上と低コスト化、低公害化、さらには産業構造調整の課題に直面しており、これらを解決することを戦略的任務として位置づけている。「今後、産業用IoTが企業の生産・経営・管理で大改革をもたらすだろう」と、その業界関係者は見通しを語った。

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