「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システムの取り組みの重要性に鑑みて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見を共有し相互に支援しているコミュニティです。IT Leadersは、その趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加しています。同倶楽部のメンバーによるリレーコラムの転載許可をいただきました。順次、ご紹介していきます。今回は、ユニチカ 情報システム部長 近藤寿和氏のオピニオンです。
このコラムの読者ならDXと聞いてデラックスと読む人はいないでしょう(笑)。我々の業界で今やDXの文字が躍らない日はないと言っていいぐらい浸透しています。ちなみに、BizHintによるとDXのXは英語圏ではTransを省略する際にXと表記することが多いためだそうです。
そんなDXが直近の課題としてクローズアップされる発端とも言える経済産業省のDXレポートには、「DXを実行するに当たっては、新たなデジタル技術を活用して、どのようにビジネスを変革していくかの経営戦略そのものが不可欠である。~中略~。ビジネスをどのように変革していくか、そのためにどのようなデータをどのように活用するか、どのようなデジタル技術をどう活用すべきかについて、具体的な方向性を模索している企業が多いのが現状と思われる」とあります。
つまり「デジタルに対するビジョンと戦略の不足」、これがDX推進における課題の1つであるという指摘です。まさに「経営課題」ですね。続いて「DXを実行していくに当たっては、データを収集・蓄積・処理するITシステムが、環境変化、経営・事業の変化に対し、柔軟に、かつスピーディーに対応できることが必要である。そしてこれに対応して、ビジネスを変えていくことが肝要である」とITに言及します。
そしてこう述べます。「我が国の企業においては、ITシステムが、いわゆる『レガシーシステム』となり、DXの足かせになっている状態が多数みられるとの結果が出ている。~中略~。すなわち、DXを進める上でデータを最大限活用すべく新たなデジタル技術を適用していくためには、既存のシステムをそれに適合するように見直していくことが不可欠である」。ここまで来るとIT部門に直結します。
レガシーシステムに関する記述をもう少し引用しましょう。「レガシーシステムの問題は中身がブラックボックス化することにあり、自分の手で修正できないほどの状況」と定義し、それに陥る原因を挙げています。1つは適切なメンテナンスやシステム刷新が行われない、つまりITマネジメントが不在であることです。
もう1つは「システム全体が一体化した古いアーキテクチャや開発技術はメンテナンスによって肥大化、複雑化する傾向にあり、時間の経過と共にレガシー問題を発生しやすい」こと。たとえ費用や時間を費やしてITマネジメントを実践したとしても、古いアーキテクチャのままでは常に再レガシー化の恐れが残る──。仰る通りで、ぐぅの音もでません。
●Next:ユニチカが実践したレガシーマイグレーション
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