[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

アフターデジタルの世界において革新を生む「2つのチカラ」

2019年10月8日(火)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システムの取り組みの重要性に鑑みて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見を共有し相互に支援しているコミュニティです。IT Leadersは、その趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加しています。同倶楽部のメンバーによるリレーコラムの転載許可をいただきました。順次、ご紹介していきます。今回は、みらかホールディングス デジタル戦略本部長 金子昌司氏のオピニオンです。

 「アフターデジタル」(注1)の世界は、日常のすべてがオンラインとなり、その中にオフラインが包含されるOMO(Online Merges with Offline)の時代となる。様々な顧客接点から高頻度で集積される行動データに基づき、顧客ごとにユーザーエクスペリエンス(UX)が設計され、長期視点で顧客に寄り添ってゆく世界が来る。中国やリトアニアや北欧では、一部でこのような世界が実現されつつあるという。これはゼロベースで初めからOMOを念頭に置いて作った世界であり、日本にとっては国家レベルのイノベーションのジレンマの危機を感じる。

注1:『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』(藤井保文、尾原和啓著、日経BPマーケティング、2019年)

 さて本題に移ろう。海外勢が国境を意識することなく構築しつつあるOMOの世界を前提としたとき、日本企業はイノベーションのジレンマをどのように乗り越え、デジタル変革を推進してゆくべきか。また、その過程においてCIOやIT部門はどんな貢献ができるかを考えてみたい。

 今や日本でも、デジタルなしにはビジネス変革を考えられない状況だが、ほとんどは持続的イノベーションにとどまる。OMOはオンラインがベースのまったく異なる世界なので、非連続なイノベーションが求められるが、既存ビジネスから離れられない多くの日本企業では取り組みが進まない。

 一方でベンチャーはデジタルの活用で革新をもたらしている。面白いことに、ヘルスケアのベンチャーであっても、自らを「テックカンパニー」と言い切る企業も多く、ドメインの専門性がビジネスモデル革新に必須ではないことが分かる。

 こうした競争環境の中で企業には何が必要だろうか? 既存顧客を相手に見えている市場での戦いではないため、これまでの戦い方では埒が明かないのは当然だ。不確実な世界で破壊的イノベーションを成功させる重要な要素として、筆者は、物事の「本質を見極めるチカラ」と「勇気をもち変化を推進するチカラ」の2つを、組織の中に育てていくことが重要と考えている。

 1つ目のチカラは、様々な現象の裏にある物事の本質、人の行動の原因になる本質を見極め、その本質に働きかける方法を見つけることである。これまでとは異なる本質へのアプローチを見つけるのがイノベーションであり、デジタル技術はここに強力な選択肢を提供する。しかし明確に見えている本質は稀で、実は顧客も自分を突き動かす本質に気づいていないことが多い。

 このチカラを養うには、各々の経験でどれだけ深く突き詰め、やりきってきたか(GRIT、注2)が重要である。ある種のひらめき体験を積み重ね、イノベーションの種に気づく感性が養える。ここに、幅広い興味や、目的意識を持って知識を蓄える努力が加わるとイノベーションを加速的に推進する。イノベーションは天才だけに与えられるものではなく、後天的な努力により養える力である。

注2:『Grit: The Power of Passion and Perseverance』(Angela Duckworth著、Scribner 刊、2016年)

●Next:イノベーションの種を形にするためのチカラ

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