応援・支援してみたい自治体に寄付を行い、その寄付金が所得税・住民税の控除対象となる「ふるさと納税」が定着している。筆者にはこれまで無縁の制度だったが、業務の関係上利用する機会があった。初めて利用してわかったこと、そして募集をかける自治体側の立場から必要な視点について考えてみた。
ふるさと納税を利用した理由
正直なところ、ふるさと納税を活用したことは一度もなかった。関心がなかったこともあるが、制度が持つ不純さや一時の過熱ぶり、手数料ビジネスをしている納税サイトの過度な宣伝ぶりなどに、どことなく釈然としない思いがあったからだ。生活拠点の自治体に納税し、有効に使ってもらいたいという考えもあった。
とはいえ2008年の制度発足に当たっては、都市に集中する税の再配分とか、地方の産業活性化とか、基軸としての政策があったのだろう。その制度設計に寄付と返礼品という要素を組み込んだのは、Go Toキャンペーンの発想とよく似ている。国民の欲を刺激して地方への寄付型納税を促し、返礼品で地産品を活性化し、税優遇措置(所得税と地方税の減税)も行うという仕組みはよくできている。
財源を集めたい自治体が高額の返礼品を提供して問題になり、後から規制する事態にもなった。Go Toキャンペーンでもポイントの不正取得など類似の問題が生じたが、これらは予見不足による制度設計の甘さである。もっとも返礼品は自治体の工夫なのだから、規制をかけずともいいのではないかと思っていたが、実際に活用してみると問題点がよくわかった。
そもそも筆者がなぜ初めてふるさと納税をしたかというと、ふるさと納税の返礼品企画に携わることになったからである。1年半ほど前から地方創生の仕事に関わり、過疎村の政策参与として政策企画と計画、実施を担当することになった。産業振興や村が目指している子供教育ビジョンの実現や村内業務改善に関わっており、ふるさと納税のための返礼品の企画開発にも携わることになったため、仕組みを理解するために納税することにしたのである。
画面1:総務省のふるさと納税ポータルサイト納税する個人側と収受する自治体側の違い
納税する側として使ってみると、いろいろと理解が深まった。納税は自治体に対する寄付という形をとる。寄付した額はほぼ全額が確定申告などで控除されるので納税額は変わらないが、納税した自治体から返礼品を受け取ることができる。寄付と考えると返礼品には違和感があるが、寄付文化が育っていない日本では返礼品で促すのが手っ取り早い。
また返礼品があるからこそ、わざわざ手間をかけてそれほど縁のない地方自治体に寄付するわけである。クラウドファンディングも減税のない寄付だが、見返りを目的とするものが多い。中には水害などで被災した自治体を応援する返礼品のないふるさと納税もある。コロナ禍で医療機関などがクラウドファンディングで資金調達する例も出てきて、日本の寄付文化も少しずつ育ってきたように感じる。
納税する際、手続きの容易さから民間が運営する納税サイトを利用するのが一般的だ(画面2)。メジャーなサイト以外にも金融系やクレジットカード系が運営するさまざまな納税サイトがある。それらから1つを選んで実際に5、6件の納税をしてみた。目指す自治体から検索するとさまざまな返礼品と納税額が並んでいる。地産品ばかりでないような返礼品もある。納税のプロセスはわかりやすく簡単だ。寄付金の用途の指定もできる。
画面2:納税サイトの検索結果ページ。本社や工場があるという理由でPCを返礼品にしている自治体は多い筆者がたまたま使った納税サイトには政策参与をしている村はなく、周辺の自治体があったのでそこに納税した。納税申し込みをすると、後日に自治体から返礼品と確定申告時の寄付証明書が届く。だんだん返礼品に目が移り、寄付をする自治体を選ぶよりも、返礼品で納税先を決めるようになってくる。
逆に納税を収受する自治体側からみると、返礼品の商品企画やアピールがいかに重要であるかがわかる。返礼品は納税を促す重要な要素なのだ。ふるさと納税の仕組みは返礼品目当てで納税し、さらに減税を受けられるというお得なメリットで成り立っている。
●Next:自治体側に必要なビジネス発想
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