[麻生川静男の欧州ビジネスITトレンド]

調査で浮き彫りになった、ドイツのスタートアップ/ベンチャーの実像:第28回

PwC・ドイツスタートアップ協会「ドイツスタートアップモニター2021」より

2021年12月28日(火)麻生川 静男

ドイツのスタートアップ/ベンチャー企業・市場に関する調査レポートが、英PwCとドイツスタートアップ協会から発表された。詳細な調査から、今のドイツの先端的ベンチャー像が浮かび上がる。総じてデジタルに特化し、欧州と北米を中心に、ベルリン、ハンブルク、ミュンヘンなどの外国人が好む都市での起業が多いといった特徴がある。

 2021年10月、グローバルのコンサルティングファームであるPwCと社団法人ドイツスタートアップ協会が共同で、調査レポート「ドイツスタートアップモニター2021」を発表した。ドイツ国内の未上場のスタートアップ企業を対象に、研究開発とデータ活用に関連する項目に重点を置いて調査している。

 合計72ページのかなり分厚い調査レポートとなっている。統計データも多数載せて、ドイツのスタートアップ/ベンチャー企業の業容と共に、創業メンバーの戦略まで見えてくる内容になっている。独PwCのWebサイトでダウンロードして閲覧できる(画面1)。

画面1:「ドイツスタートアップモニター2021」の表紙。独PwCのWebサイトでダウンロードして閲覧できる

 同レポートで言うスタートアップは、次の3つの条件を満たしている企業である。つまり、単に「私たち起業しました」だけのベンチャーはスタートアップとはみなされないということだ。

●創業10年以内であること
●確固とした雇用計画や成長計画を持っていること
●製品・サービス、ビジネスモデル、技術が高度にイノベーティブであること

 同レポートの調査対象となったスタートアップの概況を見てみると、社数2013社、創業者数5012人、従業員総数3万3589人で、約半分は社歴が2年以内。全体の社歴平均は2.6年である。以下、ドイツのデジタル関連情報メディア「t3n」の記事を参考にしながら、8つのポイントに絞ってレポートの要旨を読み解いてみたい。

1.人材確保は困難に

 平均従業員数の項目を見ると、前回2020年の調査では14.3人だったが、今回は17.6人に増加(23%)している。また、今後12カ月以内に採用する予定の人数(平均値)も前回6人に対し、今回は9人と増加傾向が見られる。ただ、募集対象の人員の確保は2020年以上に厳しくなっているので、計画どおりに進むかは不透明だ。ともかく、スタートアップ企業の27%が人材確保を最大の課題だと考えていて、この割合は昨年よりもさらに10%増えている。

2.大学が起業を促進

 ドイツのスタートアップは日本に比べて大学との関連がかなり強い。実に26%、約4分の1が大学および大学研究施設からの創業で、すなわち大学発ベンチャーである。それだけでなく、約3人に1人(36.4%)が共同創業者と大学で知り合ったという。加えて、8割近く(76.1%)の創業者は、会社が大学に近くにあることに満足している。

 大学との連携を重要視するのも無理はなく、創業者の85%が学士以上の学歴を有する。さらに、修士号は34%、博士号は16%もいる。総じて、ドイツのスタートアップはかなり高学歴者集団だと言える。専攻学部はSTEM(ドイツ語:MINT)と呼ばれる理工系が46%、経済・経営系は42%と、この2つが主流だ。年々修士号や博士号の重要度が高まる傾向にあるという。

 創業者の出身大学の上位5校は次のとおりである。

①アーヘン工科大学:5.3%
②WHU(オットー・バイスハイム経営大学):3.6%
③ミュンヘン工科大学:3.0%
④カールスルーエ工科大学:2.3%
⑤マンハイム大学:2.2%

 このうち2位のWHUと5位のマンハイム大学は経済・経営系大学だ。スタートアップの本社が多いベルリンには国立のベルリン自由大学と公立のベルリン工科大学があるが、合計でも3%にとどまることを考えると、必ずしも出身大学の近くで起業するわけではないことが分かる。逆に言えば、大学は他大学の出身者でも起業の支援を惜しまないということだ。このような「懐の広さ」がドイツの大学が起業家から頼りになる存在だと考えられている要因の1つと言えよう。

●Next:女性起業家の割合は? 主流のビジネスモデルは?

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