今回紹介するのは実話である。業務を効率化して大幅に改善してほしいという依頼を受けた時のことだ。システム化に伴う業務改善は昔からよく依頼されるが、筆者は必ず業務を可視化することから始めてもらうようにしている。可視化されていない業務を改善する術はないからである。
ある組織が業務を可視化できなかった理由
可視化には、①組織でどんな業務があるかを書き出すことと、②1つ1つの業務のプロセスを書き出すこと、の2つがある。これによって不要な業務を排除したり、プロセスを改善したり、業務体系を修正したりすることができる。この可視化の作業は、仕事の現場のひとりひとりがやらねばならない。外部のコンサルタントに依頼してヒアリングして書き出すなどのやり方は、邪道である。
しかし通常の業務をしながら可視化も行うので現場の負担は大きく、なかなか自発的にはやりたがらない。トップダウンが必要になるゆえんはそこにある。ここにまず1つの壁があり、トップが本気のやる気を示さなければ現場主体の可視化活動はうまくいかない。
今回取り上げる、ある組織はトップが本気で改善を望んでおり、現場にも浸透しているのでこの壁はなかった。ところが組織全体での業務の書き出しが完了し、いよいよプロセスを書き出す段になると突然、作業が進まなくなった。プロセスを書くやり方はeラーニングで学んでいるので手法の問題ではない。
解決の糸口を掴むためにプロジェクトリーダー会議を開き、行き詰まっている状況をつぶさにヒアリングした。そして事実が明らかになって愕然とした。端的に言うと「プロセスが複数あるからうまく書けない」というのだ。理由はファイルサーバーにあった。
この組織にはファイルサーバーの運用標準がなく、組織内の各部署での整理も当然されていない。必要なファイルを探して参照するだけで、いくつものやり方やルートができてしまっていた。つまりプロセスが1つではないことが判明した。
ファイルサーバーのフォルダー標準化で効率が大幅に改善
実はこの話、20年前に当時の勤務先で体験したことだ。勤務先では部門ごとにファイルサーバーを抱えていた。フォルダーのツリー構造をしっかり決め、運用規則が明確な部署もあったが、かなりルーズなフォルダー構成で標準化ができていない部署も多かった。
ファイルサーバーには部署で共有する仕掛かり文書や完成文書などを格納して、過去の文書を参考・参照することも頻繁だ。構造化がしっかりできていると必要な文書にすぐにたどり着くことができて仕事の効率はよくなる。逆に構造がルーズだと目当ての文書を探すのに無駄な時間を使ったり、挙句の果てに見つからなかったりする。
組織の職務分掌規定に基づく部署の権限で、職務と年度などの時間軸でファイルサーバーのフォルダー構造を標準化することができる。だれにでも直感的にわかる構造・ルールにしていれば文書類を探す作業が大幅に改善される。さらに文書ごとに日付、種類、シリアル番号、改訂回数などの情報を付与する文書管理ルールを統一することによって、文書管理と利用の効率は格段に向上する。
●Next:ファイルサーバーのレベルから改善が必要だ
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