[架け橋 by CIO Lounge]

経営と真摯に向き合い、IT組織を自ら変革しよう

CIO Lounge 理事 坂上修一氏

2022年8月5日(金)CIO Lounge

日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、CIO Lounge 理事 坂上修一氏からのメッセージである。

 読者の皆様、こんにちは! CIO Loungeの坂上です。私は1981年に食品会社に入社し、情報システム部門や経営企画部門、シェアードサービス会社などを渡り歩いてきました。そんな経歴からか、IT部門の方から「経営との関係の築き方」、経営層の方から「IT投資やIT部門のあり方」について、相談とも愚痴ともとれる話を持ちかけられることがあります。

 例えば、IT部門長の方から「経営から『ITのことはよくわからないからよろしく頼む』と丸投げされるが、お金に関しては厳しく言われる。どういうつもりなのか」という話を聞きます。一方、経営者からは「IT投資が適正かどうか、どうやって判断すればいいのか。IT担当がもっと経営や事業を理解してくれるといいのだが……」といった具合です。

 最近では、「社長が『DXをやれ』とか、『当社のDXはどうなんだ?』と言うのが悩み。皆さん、どうしているのでしょうね……」という愚痴をあるIT責任者から聞きました。こういったIT部門と経営者、事業部門のボタンのかけ違いは、どうすればいいのでしょう? 私は、コミュニケーションが取れていないことが大きな原因の1つであり、解決策はIT部門自らが変わるしかないと思っています。今回は私が取り組んできたことを通じて、そう確信する理由をお伝えします。

 私がIT部門の幹部を務めていた2009年のことです。グループのシェアードサービス会社が設立され、IT部門をここに移管することになりました。私も出向になると思っていましたが、IT担当として経営企画部門に異動になりました。これが、私にとって転換点になった出来事です。

 幹部とはいえ、それまで経営層と話す機会はほとんどありませんでした。経営企画部門では一転して、社長はもちろん事業責任者の方々と話す機会が増えました。当時、大型のIT投資が続いており、社長からプレッシャーをかけられましたが、あの手この手で説明を尽くしつつ、並行してIT投資に関するルールを作り、投資案件の選定や優先順位づけをするようにしました。見えにくいIT投資を、意義を含めて見えるようにするのが目的です。

 これらは一定の成果を上げ、そのおかげもあってか中期計画の進捗管理や次期中期計画の立案にも関わることができました。経営企画の3年はあっと言う間に過ぎ去り、次にシェアードサービス会社の常務に異動しました。前述したようにIT部門はこの会社の一部になっており、そこに戻ったわけですが、それで感じたことは、IT部門に元気がないことでした。

 従来の業務システムの開発・保守に加え、社内外のコミュニケーションシステム、セキュリティ対策、IT内部統制、海外関連会社を含めたガバナンスなど担当領域は増えています。しかしIT部員は増えず皆、疲弊していたのです。人事部門に毎年のように増員を要請していましたが、食品会社のシェアードサービス子会社ですから、簡単に実現するわけもありません。ではどうするといいでしょうか?

●Next:疲弊していたIT部門、どのようにして組織変革に向かったのか

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