現代の農業に化学肥料や農薬は欠かせない。効率よく農畜産物を生産し、消費者のニーズに応えて供給するためにそれらは必須の要素である。しかし、消費者には化学肥料や化学農薬の安全性に対する懸念、つまりそれらが健康に及ぼす影響があることも間違いない。それらへの依存が進む中で、オーガニック農産物に対する取り組みがある。
子供たちにオーガニック給食を届けたい
筆者は食と農業に強い関心があり、本コラムでも日本の食糧自給率の低さや改善の方向、あるいは食品添加物の実態と対策などについて述べてきた(関連記事:呆れるほど危機感のない日本の食糧事情、大丈夫か?/気にしながらも、実はよくわからない食品添加物問題)。
食は人が健康に生きる根幹であり、農業はそれを支える産業の根幹である。日本には古くから発酵食品の文化がある。植物も動物も微生物で生かされていることを再認識し、農産物も自然の微生物に委ねるオーガニックをもっと摂れるようにしたいと考えている。
特に身体づくりの最中にある子供たちには、オーガニックや発酵食品を食べさせてあげたい。そういう思いの人たちがオーガニック給食の普及に尽力している。オーガニック給食で先行した千葉県いすみ市などが「全国オーガニック給食協議会」を2023年6月に立ち上げている。
いすみ市では有機稲作に本格的に取り組み出した2014年以降、有機米を市内の学校給食に提供開始し、2017年には100%有機米給食を達成した。さらに有機野菜の産地化と給食を進めている。地産地消循環型で有機農業を活性化したよい事例だろう。
オーガニック給食の結果、残食率が大幅に減ったことでフードロス対策にもなり、若い移住者も増えたそうだ。体作りや健康への影響が評価できるのはだいぶ先かもしれないが、比較検証などの手法でエビデンスが得られたらいい。
東京都武蔵野市では1987年からオーガニック給食が始まった。保護者や栄養士や校長の熱意により1つの小学校から始まったオーガニック給食は、さまざまな関係者の協力で有機食材と化学調味料を一切使わない基準を決めて広がっていった。武蔵野市も給食・食育振興財団を設立して全市へ広げる支援をしている。武蔵野市でも残食がなくなったのが大きな成果である。
大分県臼杵市ではオーガニック給食が若い移住者を呼び込んでいる。臼杵市が10年以上も前から有機栽培に理解を示し、積極的な活動を続けて持続可能な農業に取り組んでいる。若い夫婦は子供の食の安全に敏感である。このような事例は全国で増えていて、オーガニック学校給食フォーラムという啓発活動も活発だ。子供たちにオーガニック給食を届けたいというエネルギーが高まっている。
直近になるが、2024年2月12日(月=祝日)の午前10時から、オンラインイベント「第3回オーガニック学校給食フォーラム」が開催される。関心のある方には、時間が許せばぜひ参加していただきたい。
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