[架け橋 by CIO Lounge]

“何が変わらないか”を見極めるのがDXの要諦

フジテック 専務執行役員 デジタルイノベーション本部長 友岡賢二氏

2024年10月18日(金)CIO Lounge

日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、フジテック 専務執行役員 デジタルイノベーション本部長で、CIO Lounge正会員メンバーの友岡賢二氏からのメッセージである。

[Focus] CIOが改めて見据えるDX

 米アマゾンがデジタルトランスフォーメーション(DX)で大成功を収めた企業であることは、皆さんご承知のとおりです。2019年6月、米ラスベガスで開催されたコンファレンス「re:MARS」でCEO(当時)のジェフ・ベゾス氏が語った内容がDX戦略を考えるうえで非常に参考になりますので、今回はその考え方を皆さんにご紹介します。

 BUSINESS INSIDERから引用します。ステージに立ったベゾス氏は次のように語りました。「私は『今後10年で何が変わるのか』を頻繁に尋ねられます。何が変わるかよりも、むしろもっと重要なのは“何が変わらないか”のほうです」。

 さらにこう続けます。「そのことを真剣に考えることをおすすめします。なぜなら、どこにあなたのエネルギーを注ぎ込むべきかを自分で判断できるからです。ECビジネスについてなら、わかります。10年後にも、消費者は安いものを求めるでしょうし、素早い配送も求めるでしょう。品数の豊富さを求めることも変わらないはずです。これらのニーズは非常に安定的なものです」。

 日本企業ではよく「変化対応力」が議論されます。これは外部環境がどのように変化するかを的確に捉えてそれに対応していくことを意味しますが、ベゾス氏は「何が変わらないか」に注目すべきだと説きます。ECにおいてそれは「安い」「早い」「品数の豊富さ」の3つである、と。かつて「早い、うまい、安い」をキャッチフレーズに業績を伸ばした牛丼チェーンを思い出しますが、私たちがDXの戦略を考える際にこうした思考のフレームワークは大きなヒントになります。

 「安い」と「早い」はほとんどの企業において戦略的に重要なキーワードです。一方、「品数の豊富さ」や「うまい」の部分は企業戦略や事業の性格によって異なるでしょう。自社における戦略を立てる際に、この部分が何であるかを考えてみることをお勧めします。

 私が自社のDX戦略を考える際に定めたのは「安全・安心」でした。まず「安全・安心」があり、「早い」、そして「安い」が続く。DX戦略の中心軸に「安全・安心」を据えることに迷いはありませんでした。なぜならば、このことによって、自社の経営理念と事業戦略とDX戦略が1本の太い中心軸で統合されたのです。

 このようにDXの戦略の軸に据えるのは目新しいものでなく、普遍的で当たり前のことです。そしてそれは事業戦略そのものです。事業戦略と離れたところにDX戦略があるのではなく、事業戦略を実現するイネーブラーとしてテクノロジーがどう貢献できるかを考える必要があります。必然的に、ここで掲げた軸は企業が存在する目的として定めた企業理念(パーパス)の中心にある重要な価値観と共通する概念でなければならないでしょう。

●Next:「何をやらないか」を選別、「顧客のニーズ」はDX戦略の中心軸に

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