[事例ニュース]
トヨタ、車載コンピュータのコネクタピン配置設計を量子着想技術で自動化
2026年1月14日(水)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)
トヨタ自動車(本社:愛知県豊田市)は、自動車に搭載する電子制御ユニット(ECU)における設計・開発プロセスの効率化に取り組んでいる。トヨタシステムズと富士通の支援の下、量子着想技術とAIを活用して、自動車業界で初めてECUのコネクタピン配置設計の自動化に成功。従来手法に比べて20倍以上高速に設計できるようになった。2025年5月から量産ECUを対象に従来手法と並行して実業務に適用している。トヨタシステムズと富士通が2026年1月14日に発表した。
トヨタ自動車は、トヨタシステムズと富士通の支援の下、自動車に搭載する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)における設計・開発プロセスの効率化に取り組んでいる。
両社によると、CASE(コネクテッド/自動運転/シェアリング/電動化)の進展に伴い、自動車に搭載されるECUの数は増加の一途をたどっており、その配線や接続の複雑さは設計現場の大きな負担となっているという。
「ECUに接続するコネクタピンの配置設計では、100ピンの端子配列において、理論上9.3×10の157乗通りという天文学的な組み合わせになる。製造現場では配置検討にかかる時間の長期化や属人化が課題になっている」(トヨタシステムズ、富士通)
今回、トヨタのECUプロセスにおいて、富士通の量子インスパイアード技術(量子着想技術)「デジタルアニーラ」およびAIを活用し、コネクタピンの最適な配置を自動で算出するシステムを構築した。トヨタの設計基準や知見、トヨタシステムズのグループ向けCAE解析業務およびインフラの知見、富士通のコンピューティング技術とソフトウェア技術を容易に利用できる仕組みを目指したという。
図1:量子着想技術でECUコネクタピンの適切な配置設計を算出する取り組みの概要(出典:トヨタシステムズ、富士通)拡大画像表示
構築したシステムは、熟練技術者のノウハウを基に決めていたコネクタピンの配置パターンと評価をスコア化した情報をAIモデルに学習させ、AIモデルを数式情報に変換してデジタルアニーラで高速に計算する仕組みを持つ。従来手法に比べて20倍以上に設計を高速化することに成功した。ECUのコネクタピン配置設計の自動化は自動車業界で初めてという(図1)。
このシステムにより、従来は熟練者が手作業で試行錯誤していた配置設計業務を自動化し、設計期間の短縮と品質の均一化が可能になる。トヨタはこのシステムを量産ECUにおいて、2025年5月から従来手法と並行して実業務に適用。今後、適用範囲を広げていく。
自動車製造への量子着想技術の適用経験を重ねる
トヨタのプロジェクトで活用したデジタルアニーラは、膨大な選択肢の中から最適な組み合わせを見つける「組み合わせ最適化問題」を高速に解くためのコンピュータアーキテクチャである。量子アニーリングの原理(物理現象)をデジタル回路で模倣することで、デジタル回路の利点(設計自由度、安定動作、ノイズ耐性)を生かして解の高速な探索を実現している。富士通は、現行の量子アニーリングマシンでは扱えない大規模な問題も解けるとしている(関連記事:富士通研究所、100万通りの組み合わせ最適化問題をデジタルアニーラで解く並列探索技術を開発)。
トヨタとトヨタシステムズ、富士通は、これまでの取り組みでも自動車の生産順序を最適化する用途にも量子着想技術を活用している。また、自動車製造部品の物流ネットワークを最適化する実証も行っている(関連記事:自動車の生産順序を量子着想技術で導出─トヨタ、新車両生産指示システムを堤工場で稼働/トヨタシステムズ、自動車部品の配送ルートをデジタルアニーラで算出、コストを2~5%削減可能)。
トヨタ自動車 / 製造 / 量子アニーリング / 富士通 / トヨタシステムズ / デジタルアニーラ / 量子コンピューティング / 愛知県 / 豊田市 / 組み合わせ最適化問題
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