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[CIO INSIGHT]

景気後退で変わるユーザーとベンダーの意識─2008年度ベンダー評価調査結果

Vendor Value 2008: IT Providers, Running In Place By Guy Currier

2009年2月18日(水)CIO INSIGHT

CIO INSIGHTから2本の記事を取り上げる。1本目はCIO INSIGHTが行う、毎年恒例のベンダー評価調査の結果。世界的な景気後退は、ユーザーのコスト意識を増大させ、ベンダーの評価にも大きな変化を与える結果となった。2本目はWeb2.0をうたうコミュニケーションツールの企業利用に関するインタビューだ。いくつかの事例から、企業におけるWeb2.0ツール活用の可能性を探る。(翻訳 : 古村 浩三)

前年度調査から22のベンダーの評価が上昇、15のベンダーが下落するなど激しく順位が変動。高いROI(投資利益率)の実現や顧客ニーズへの柔軟性・迅速性が高評価の源泉に──。CIO INSIGHTがユーザー企業のITエグゼクティブを対象に実施した、2008年度ベンダー評価調査の結果である。

ROI向上と顧客重視の姿勢が高評価のカギ

今回の調査で前回調査よりも評価が上昇したベンダーに共通するのは、顧客のROIの向上に力を入れている点だ。厳しい経済環境の中、ユーザー企業が投資対効果をますます重要視するようになっていることの現れといえる。前回調査よりも大きく評価を伸ばしたコグノスとスプリント・ネクステル、ノーテルの3社は、ROIの改善や、コスト削減効果が評価された。また今回の調査で上位となったベンダーは、いずれも顧客対応にもっとも力を入れているという点で共通している。今年の調査で初登場にも関わらず最高の評価を獲得したRSAセキュリティは、ROIの評価では総合2位だったものの、予算と納期の厳守、顧客のニーズに対する柔軟性が高評価につながった。

ベンダーに対するロイヤルティの評価は総じて高い。今回調査対象としたすべてのベンダーについて、顧客の半数以上が今後もそのベンダーを選ぶと回答している。だがロイヤルティの評価は、パフォーマンスの評価とは必ずしも一致しない。セールスフォース・ドットコムやアドビシステムズといった企業では、総合順位に比べてロイヤルティの評価が高い。魅力的な機能を次々に投入していることが、ユーザーの高い支持を集めることにつながっている。SAPは順位としては奮わなかったものの、今回の調査でも根強い人気を維持している。

中小企業から支持を集めるベンダーも存在する。IBMの製品は、大企業に比べて中小規模の企業からの評価が非常に高い。同社の製品を選択する中小企業は、初期投資に比較的多額の資金が必要になるものの、長い目で見ればコスト削減効果が十分見込めると判断している。ただし高額なサービスを受ける企業は、大企業に比較すると少ない。HPも中小企業から圧倒的な支持を受けている。一般的には大企業のみが享受できるとされる水準のサービスでも、中小企業に提供できるのが強みだ。リセラーやサービスプロバイダーと良い関係を築けているという事実が、その背景にある。最近、中小企業にとって重要性が増しつつある、モバイル分野に焦点を絞った展開を行うリサーチ・イン・モーションも注目株だ。

経済環境の悪化がベンダーに変革を促す

ノースカロライナ州ウィンストンセーラムに本拠を置くモーゲージ保険会社、トライアド・ギャランティー・インシュアランスのCIO(最高情報責任者)であるジョージ・ジャクソン氏は、「ここ2年間、ベンダーの製品・サービス水準には大きな変化はないものの、経済環境が悪化する中で、顧客重視の姿勢を積極的に示すベンダーが増加している」と語る。

だが、このエネルギーは必ずしも適切な方向に振り向けられているわけではないようだ。「製品ラインナップの拡充が、必ずしも企業の課題解決に直結するとは限らない」と、ボランティア団体ピースコーのCIO、エドワード・アンダーソン氏は指摘する。「イノベーションの進展によって多くの製品が登場してきた。だが新たな製品の登場により、システム構築やテスト、ドキュメント作成といったユーザー企業の負担は増すばかりだ」(アンダーソン氏)。

調査結果には明示していないものの、ベンダーに対する現場の担当者と経営陣の認識には大きな違いがあることが明らかになった。一般に現場で評価の高いベンダーには、ITエグゼクティブの評価は低くなる傾向があるようだ。

経営者と現場の評価には隔たりも

アバイアはその典型例といえる。同社に対するITエクゼクティブからの評価は全般的に低くなっている。一方で、システム構築や保守を実際に行う、現場の責任者クラスからの人気は高い。特にサービスレベルの評価に関する両者の乖離は顕著になっている。スプリント・ネクステルの場合は反対に、現場の責任者よりも経営層レベルからの評価のほうが高い。これらの認識の違いは、ベンダー選定の際に意識しておく必要がある。現場と経営層の意思疎通の欠如が、認識の違いの源泉となっている場合が少なくないからだ。

調査の詳細

米国に本拠を置くユーザー企業のITエグゼクティブに対し、2008年10月3日から15日の間にオンライン調査または直接取材による調査を行った。自社が利用するベンダーを正当に評価できる知識を有するとした回答者のみを抽出、568の有効回答を得た。

過去1年以内に製品やサービスを利用したベンダーに対し、7つの評価項目について「優れている」「良い」「普通」「悪い」の4段階で評価してもらった。それぞれの評価項目について、「優れている」と「良い」の評価をした回答者数のパーセンテージを算出。個々の評価項目の評価を平均した結果を総合評価としてランク付けをした。平均値は単純平均により算出。小数第1位で四捨五入した結果を採用した。

調査対象企業の2007年の売上げ(非営利団体の場合は予算総額)は、257社が500万から1億ドル未満、185社は1億ドルから10億ドル未満、126社は10億ドル以上。調査対象者のうち204名は経営幹部クラスであり、他はIT部門の責任者以上の肩書きを持つ。現場のIT担当者についても、少数調査を行った(調査結果には反映していない)。

評価対象のITベンダーは、米ビジネス誌フォーチュンが発表している、全米および世界の売上高上位企業をランキングした「フォーチュン500」や「フォーチュン・グローバル500」、またZiff Davis Enterprise Researchの調査対象企業からリスト化した。調査結果には、すべての評価分野で49以上の有効回答を得たベンダーのみを掲載している。

表1 調査結果(総合)
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